ハイデルベルクに戻ると一休みして、長谷川さんの家に立ち寄り、それから新装成ったテアターへ。前のテアターはそれなりに雰囲気があったが、とにかく古かった。随分と綺麗になったものだ。現代的な建物に変身した。客席は全て正面に舞台が見える。昔の客席より全てが見易くなった。ホワイエ広くなったし明るい。全てを立て替えたのかと思ったが、聞けば元の舞台と客席も未だ残っているとか。

外観はあまり変化が無い様に見えるが、道の無かったサイドの部分が通り抜けられる様になり、しかも壁面がガラス張りで舞台のスタッフの仕事場が自由に見られる様になった。

ところで「最後の練習(Letztes Probe)」はGPと違って駄目出しをするため、終わりの時間が読めない。出し物は「こうもり」だが、長くなるかもしれない。舞台の真正面に陣取った演出家と技術者がコンピュータを駆使して照明や装置を動かしている。実に現代的な風景だ。演出は時代を新しくして、尚且つ何処の話か分からない様にしているようだ。中央に箱があり、部屋になっている。クリムトの絵が掛かって、世紀末のウィーンを思わせる。

序曲が始まった。しかし、この二日間の疲れが出たのか、時差も手伝って私の体調が思わしくない。胃がむかむかして、その上眠い。目を瞑って聴いていたが、時折眠った。それでも新しい劇場の音は気になり、いろいろな感想はある。体調不良を差し引かないといけないと思うが、聞こえる音は少々刺激的だ。ハイデルベルクのオケでそう感じたことは無かったので、新しい劇場の音響の問題だろう。歌もソプラノとテナーが強く聴こえる。木管が高めに響くのは何故だろう。終わったら電話をもらって落ち合う約束をして前半が終わると、一人で宿に帰り休む。K君は引き続き最後までいる事に。私も若い頃はこの程度で疲れなど感じなかったのになあ。老けたか(笑)

9時40分ごろに電話が来た。大分具合は良くなったが、今日は酒は止めて置こう。二人が待つレストラン(Essighaus酢の家)に急ぎ歩く。寒い。2年前は夏の様だったのに、今年はまるで冬だ。10時を少し回った頃に到着。早速メニュー(Speisekarte)を見ると、驚いた事にヴァイツェンの小300mlがある。ヴァイツェンは何処に行っても500mlだったのだが、最近は小さいものを頼みたい人が増えたのだろうか。これならいけるかと思ったが明日からの旅を考えて、ミネラルウォーターと小さいサラダが本日の食事。まゆみちゃんには笑われたが、仕方が無い。これでも自信が無かった。K君はグーラーシュにシュペッツレを付け合せにした。いろいろ話していて、気が付くとサラダを食べ切った。少し恢復したのだ。それ以降は気分も次第に良くなり、11時過ぎまでお喋りして帰った。ハイデルベルクは安全な街なので、遅い時間でも心配はまあ無い。ホテルに戻ると、シャワーを浴び洗濯をして床に就く。明日はハイデルベルクを見て、マンハイムにも行く。

三日目

今日は市内観光が中心なのでゆっくり出かけ、9時ごろハウプトシュトラーセ(メインストリート)の散策から始める。昨日は裏道ばかり使ったので、三日目にして漸くここを通る。曇っているが、雨は降っていないので良しとしよう。毎度来ている自分には見慣れた風景もK君には新鮮で、発見もあるだろう。それはきっと自分にも面白い筈だ。

ビスマルクプラッツを基点にする。それにしても公衆電話が無い。ここはハイデルベルクのバス、市電が集まる場所で、人も同様に集まるのに。上野にあった「電話の家」ほどではないが電話のための建物があった。その場所を見ると建物自体はあったが電話は全て撤去されている。Woolworth(Woolworthsというオーストラリアの紛らわしい会社もあるのでご注意)アメリカ資本のマーケットも廃墟になっている。ちょっと寂しい気がした。そんな事をつらつら考えながら歩き出した。

K君が興味を持った(大体の人が興味を示すが)NORTSEEは魚料理の全国チェーンで、燻製やマリネーなどを扱い、サンドイッチとしても販売している。ディスプレイが素晴らしく奇麗な店だ。この日は鯖の燻製が実に美味しそうだったが見るだけに留めた。

K君は最近出来た姪御さんに何か土産を考えていたので、そうした店に寄る事になった。そこで先ずは日本人観光客にお馴染みの「ユニコーン」に初めて入った。面白いものもあるが、高い。ドイツの手工品は我々から見れば驚くほど高い。税金の関係もあるが、大した細工でもないのに、とつい思ってしまう。ここは冷やかしだけにして、次にKehthe Wohlfaeltを見る事に。これは元々ローテンブルクにあったものが増えたもので、今はここハイデルベルクそれにニュルンベルク、ベルリンなどで一年中クリスマスマーケットをやっている。

ふと見ると掃除をしている。通路で掃除機を掛けていたのだ。見てもいいかと問うと、勿論だと言うがこちらは勿論ではない。商売をしていて客の邪魔をする様な行為が好い訳は無い。日本では考えられないが、ここはドイツだった(笑)店員の仏頂面にも慣れて置こう。

それでもカミさんに言われていた錫細工(Zindekoration)があったので目を留めると、裏にも色が塗ってあり悪くなかったので購入した。20ユーロほどだったが、免税にしてくれる様に言うと「50ユーロから」だと言う。ミュンヘンで買い物した時には10ユーロでもしてくれた。やはり、ここはブランドに胡坐をかいた碌でも無い店だと思った。K君の買い物も済んだので、ハイデルベルクカードを買いに市庁舎へ。ここの係りの女の人は愛想が良かったし、英語も上手だった。もっとも余り上手な人は、こちらが困る(笑)片言同士がちょうど良い。

1日券を購入し、一路ハイデルベルク城へ。2011年にここのケーブルカーは工事中だったので、今度は乗りたかった。すっかり新装開店になった登山電車(Bergbahn)は綺麗で乗り心地が素晴らしかった。駅舎も自動化され、現代的な佇まいだ。何はともあれ城に行きヴァインケラー(Wein Kellar)で世界一大きいワイン大樽(Grosses Fass)を見て、新しく設えられたカウンターでワインを引っ掛け、薬事博物館を見学して、それから風景を楽しむという何時ものコースだが、何べんやっても飽きない。その後ケーブルカーでひとつ上の駅まで行き、違う景色を見てから街に下りる。

カールテオドール橋、通称古い橋を見てからマンハイムに向かう。ビスマルクプラッツから市電という手もあるが、少し疲れていたし急いでもいたので大学広場(Uniplatz)からバスに乗る事にした。流石に速いし疲れないし、風景も違う。さて、今日は近場なのでレールパスは使わない。したがってチケットを購入する事になる。券売機は以前に挑戦してめげた事がある。しかし、今回は機械自体が進歩して格段に使い易くなっていた。窓口でも買えるが、長蛇の列だ。ドイツ人でも券売機を嫌って並ぶ人は多いからだ。案外ドイツ人は機械に弱い。まずスタート地点をタッチ、全てタッチスクリーンなのだ。次に目的地を入れるが、アルファベットの頭文字を入れると候補をだしてくれるので楽だ。それから直近の列車を出してタッチすると金額が表示されるので金を入れればお仕舞いだ。何だ簡単じゃないかと思ったが、実は「直近の列車」に落とし穴があったDB lineとDB assistant lineと出てくる。余り考えずに前者を選んだのだが、これはEC(オイロシティ)IC(インターシティ)などの上級列車のチケットの事だった。気が付いたのは帰りに買った時だが、迂闊だった。SバーンやRE(地域急行)は本線とは違う料金体系らしい。二人で行きは13ユーロ、帰りは10ユーロ20だった。しかし、逆に一人100円ちょっと支払えばICに乗れるなら悪くないとも思ったが、もっとも乗ってないから損した事に違いは無い(笑)

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