寮問題について


<院生寮問題の経過>

 大学当局及び院生寮は、あくまで院生独自寮建設を目指しているが、旧中和寮建物老朽化の現実的対応策として、混住寮(院生・学部生・留学生が混住)の建設可能性を検討している。混住寮は学部生との共有施設となる関係上、院生寮単独では判断しかねる問題も発生してくるため、4寮(一橋寮・中和寮・院生寮・女子暫定寮)及び3自治会が参加する話し合いの場(「新会合」)を設けて混住寮に関する討議をしたい旨、阿部前学長から1996年3月に提案がなされた。院生寮はこの前学長の提案を受け入れ、「新会合」を数回行い話し合いを続けてきたが、前学長任期中にはほとんど具体的な進展が見られなかった。
 だが石学長就任後、1999年2月の「新会合」において大学当局は、2000年度概算要求の際に混住寮建設予算をのせるという具体的提案を示した。新たな提案は次の2点である。
(1)混住寮建設以前の1999年度中に、寮生が院生寮から立ち退くこと
(2)既存寮(一橋寮・中和寮)の管理運営問題の見直しを行うこと
 現在、この提案に関して問題となっているのは主に次の点である。
(a)院生寮取り壊し問題
 大学当局は概算要求の交渉を有利に進めるという理由で、1999年度中に寮生が院生寮から立ち退き、一橋寮と中和寮とに別れて一時的に居住するという提案を行っている。しかし、現時点で院生寮はこの提案に反対している。一橋寮・中和寮は寮生大会を行う時期にないため、院生を一時的に受け入れることについて寮生の同意を得ていない。
(b)混住寮および既存寮(一橋寮・中和寮)の寮自治の問題
 大学当局は(a)と同様、概算要求の交渉を有利に進めるという理由で、混住寮及び既存寮における管理運営権を明確なかたちで大学当局におくことを提案している。具体的にどのような寮自治が保障されるのか現時点では明確になっていない。
(c)既存寮(一橋寮・中和寮)の食堂廃止の問題
 改修後の一橋寮・中和寮には「新新寮規格」が適用されるため、現在の寮食堂は廃止される。現在、一橋寮・中和寮とも寮生大会を行う時期にないため、代替施設の受け入れについては寮生の了承を得ていない。
(d)学内手続きの問題
 混住寮及び既存寮には「新新寮規格」が適用されるため、これまでの一橋大学における学寮のあり方から大きく逸脱するものとなる。1988年に結ばれた寮問題の確認書を結び直すためには、当然、団交を行うことが必要となるが、具体的な予算要求の際までに学内で十分な問題の周知と方針決定を行うのは時間的に極めて困難である。

 これらの問題をめぐって、現在もなお「新会合」での話し合いが続いている。事態は流動的だが、院生寮と院生理事会は今後も連絡を密に取り、問題の学内周知に努めながら、今回の当局提案を検討し、これに対する方針を決定してゆく。



<解説:小平混住寮建設計画の内容とこれまでの経緯>

 現在検討されている混住寮とは、小平に建設が予定されている400人規模の新寮のことで、これは1996年3月の阿部前学長の提案に端を発している。この提案には、既存の学寮の改修、寮生定員の増加、留学生寮の拡充、院生寮の新設、さらには小平跡地の再開発という狙いがあった。
 ただし、文部省は寮生数の純増および院生寮の存在を認めていないため、新寮建設のためには今ある寮の定員を減らし、そこで浮いた分を混住寮にまわすなどの工夫が必要である。
 そこで、まず一橋寮を今の4人部屋から個室に改修することによって、前期学生定員のうち半分を浮かせ、さらに中和寮を現在のような名目上の2人部屋(実質的には1人部屋)から名実ともに1人部屋とすることによって、後期学生定員のうち半分を浮かせる。これでおおよそ136人+136人=272人。さらに留学生分として100人程度を確保し、これらに「色をつける」かたちで、院生分の40人程度を付け加える。このような大規模な数合わせによって、400人規模の新寮を文部省に認めてもらえるというわけである。
 しかし、その際生じる問題は、この混住寮のみならず改修後の一橋寮・中和寮までもが、いわゆる文部省の「新新寮規格」と言われる基準にそった寮になることである。「新新寮規格」では、1,管理権が大学当局に置かれ、2,公私負担区分が明確化され、3,個室となり、4,食堂が設置されない(東大の三鷹寮がその典型)。
 このような問題はあるものの、各寮の老朽化問題の解決、寮生定員の実質的増加などのメリットがあること、また、今後も混住寮・一橋寮・中和寮の寮自治が従来通りに保障されるという阿部学長の約束があったことから、院生寮は1999年2月の「新会合」で新提案が示されるまでは、基本的に混住寮建設計画を受け入れるかたちで話を進めてきた。また、一橋寮・中和寮は当初難色を示していたが、1998年末の寮生大会では「食堂の代替施設をつくる」「今ある寮自治を維持する」ことを条件に、同計画を受け入れる方向にあった。


<寮問題確認書>

確認書

 評議会は、前期自治会執行委員会、後期学生会執行委員会、大学院生自治会理事会と、1987年11月17日および12月3日に「今後の学寮問題に関する原則について」を総括的議題とする団交を行った。この団交は、1985年7月17日の評議会決定に関する問題およびそれによって生じた学寮をめぐる諸問題を解決し、今後の学寮問題の原則を確認することを目的に行われたものである。
 この団交において、前記四者が合意し、確認した事項は、下記のとおりである。



1.学寮の意義について
 学寮は、教育の機会均等を保障するための福利厚生施設であり、寮生の自治に基づき自由な学問の研鑽と高邁な人格の育成に資することを目的とする。

2.文部省の2.18通達に対する本学の評価と態度について
 2.18通達に対する本学の評価は69年決定の立場から変わっていない。すなわち、2.18通達の受益者負担の考え方は、教育の機会均等という精神に反する。また通達による負担区分の強制は、大学の自治に対する侵害である。

3.学寮の光熱水費の負担のあり方について
 光熱水費の寮生負担のあり方について、以下の原則を確認する。
 (1)公私区分を行わない。
 (2)算定方式は、定額制とする。ただし、固定金額制ではない。
 (3)寮費改訂は、原則として寮生との覚書による。
 (4)負担額は、できる限り低廉とする。

4.寮食堂の運営・炊事人人件費負担のあり方について
 (1)寮食堂は、維持・存続されねばならない。
 (2)基本的には、寮食堂の管理・運営の責任は大学にある。
 (3)理念的には、寮食堂炊事人の配置責任とその雇用労働条件の確保の責任は大学にある。
 (4)炊事人は、全員公務員であることが望ましい。
 (5)上記(1)から(4)の確認事項に照らして、現在の寮食堂の運営は不正常であり、改善すべきで
    ある。

5.学寮問題の解決のための合意形成について
 (1)各寮問題については、各寮との交渉に基づく覚書による。
 (2)合意事項の改訂は、以下のとおりとする。
  (i) 団交確認事項の改訂は、団交確認による。
  (ii) 覚書での合意事項の改訂は、覚書による。
  (iii) 学生側は、改訂を要求することができる。

 なお、記2の次の点については、合意には至らなかった。すなわち、学生側は「一橋大学は、現時点においても教員と学生の間では、69年決定にいう2.18通達を全面的に排斥する立場に立ち、負担区分問題は、本学独自の立場で自主的に決定する。」と主張したのに対し、大学側は「理念的には、一橋大学においては、教員と学生の間では、69年決定にいう2.18通達を全面的に排斥する立場に立つ。負担区分問題は、本学独自の立場で自主的に決定する。」と主張した。

1988年1月18日

一橋大学評議会        議長  川井 健
一橋大学前期自治会執行委員会 委員長 多田一路
一橋大学後期学生会執行委員会 委員長 大重光太郎
一橋大学大学院生自治会理事会 理事長 長谷川裕


戻る