冒険の手引き

　ロングヒルの片田舎に住んでいた貴方はある晩、電波の命令を受けた。それによると王国の秘宝「虎目白豹の像」に埋め込まれていた「￥ダァの魔除け」が何者かに奪われたので探索せよとのことであった。秘宝を奪った者はノコギリ山の麓の洞窟に姿を消した。その洞窟には大勢の人間が探索を試みていたが、最深部までたどり着いた者はいない。貴方はさっそく旅支度をして村の者に別れを告げた。もっとも電波の命令だったために村の者たちは貴方がなぜ旅立つのかわからなかったのだが…

　貴方が電波の命を受けた際に、記した紙切れが残っている。それによると洞窟内は通路と部屋、そして階段によって構成されている。通路を進む毎に体力が減っていくので、その場合速やかに食事を取らないと悲惨な最期を遂げなければならない。しかし食事が出来るのは部屋だけであるので、食事のタイミングは慎重に選ばなければならない。部屋では食事の他に薬を飲むこともできる。薬は色と形によって効力が違う（ただし冒険のたびに色形と効用の対応は変化する）。
　ドークツ内にはモンスターや罠も潜んでいる。また宝箱があったりもする。一般に階段を降りるとより価値のある宝が手に入るらしい。

　多くの戦闘は武器を持って戦うことになるのだが、貴方が神に仕える身であるなら祈ることが出来る。戦闘中の祈りは不浄な敵（一度死んだが邪悪な力によって蘇ったものども）を浄化することができる。しかし未熟な者は何度も祈らなければ浄化に成功しないだろう。また、非常に強力な敵に対しては未熟な者の祈りは通用しない。
　貴方に魔術の心得があるならば、魔法を使うことができるだろう。この世界には現在でも147の魔法が伝わっている。ただし作者が手を抜いたのでそのうちの二つしか使えない。
　戦闘は全て貴方のステータスと武器防具の合計に少々の運を加味して決まる。運は何処かで誰かがダイスを振っているのだが、多くの場合貴方はダイスの値を知ることができる。運命の神が貴方のために教えてくれているのだろうか？いやいや、これは作者からのせめてもの心づくしである。

　貴方のステータスには、体力と精神力、強さ、素早さ、器用さ、移動力がある。体力は０になると力つきて冒険が終わってしまう。精神力も同様であるが、こちらは魔法を使ったり神に祈りを捧げることによって消耗する。また、ある種の敵は貴方の精神力を奪っていく。部屋で休むことによって精神力は回復していくが、微々たるものだ。薬の中には精神力を全快させてくれるものもあるだろう。
　強さは敵との戦闘のさいに勝ちやすいかどうかの指標となる。また、強さが高ければ高いほど、金貨を持ち運ぶ労力が楽になるだろう。器用さは罠を回避する能力である。宝箱に仕掛けられている罠を回避するにも同様にこの技量がものをいう。素早さは敵から逃げる際に重要であるが、それよりもドークツの移動に影響を与える。ドークツでは一回の移動で何歩進めるかはひとえにこの素早さに関わっているからだ。そして素早さに応じて移動力が設定される。ただし移動力は持ち物の重さに応じて変化するし、職業によっては多少のことでは移動力が損なわれない場合もある。ドークツの中には移動力を高めてくれる魔法のアイテムも存在すると聞く。移動力が少なくなったら持ち物を捨てる(cast off)こともできる。

　ドークツの内部にはモンスターの他にも様々な人間が活動している。食料を売り歩く者には何度もお世話になるだろう。彼らは不思議と、貴方の体力が消耗しきった頃にやってくる場合が多い。中には高い値で売りつけて暴利を貪ろうとする者もいるだろう。
　貴方の持ち物を買い取ってくれる者もいるが、その場合選択は慎重にしないといけない。一度売ったものはもう取り返せないのだから。また貴方が貧しいならば、金貸しのお世話になるのもやむを得ないだろう。ただし、彼らの取り立ては非常に厳しい。
　宝石商に出くわしたなら、ぜひとも宝石を買うべきだ。というのも、宝石は一個で金貨５００枚分の価値があるが、金貨５００枚の重さに比べて著しく軽いからだ。情報屋は薬の効用を教えてくれることがある。ぜひとも１、２度は話を聞きたいものだ。

　階段を下りる際、時々貴方は自分の技量が高まることを感じるだろう。ドークツを進むにつれて何度かそのような体験をすることになる。これはだいたいにおいて歩数と関係しているので、その関係を理解することがドークツの最深部までたどり着く最も重要な秘訣となるであろう。
　ドークツの最深部が地下何階なのかはわかっていないが、少なくとも地下７回まであることが確認されている。また、ある条件を満たすと天より称号を授かることができるという話がまことしやかに流れているが、真偽のほどはわからない。

　そろそろノコギリ山の麓に着いたころだ。さっそく貴方はドークツの中に入ることになるのだが、最後に貴方の職業について触れておこう。
　戦士は非常に高い強さと体力を誇っているので初心者が選ぶにはちょうどよい。敵をどんどんなぎ払ってドークツを進むことができるだろう。盗賊は素早さと器用さが高いので罠を回避し、宝物をたやすく手に入れるだろう。これも初心者に向いている。
　僧侶は神に仕える者だ。体力も強さもさほどないが、祈ることによって体力を回復したり不浄な敵を浄化するだろう。魔術師は魔法を使える代わりに非常に非力である。初心者が僧侶や魔術師で冒険するのは勧められない。
　しかし何よりも非力な存在は観光客である。この職業…というのかわからないが、体力も精神力も低く力もない。器用さも持ち合わせてない。彼女・彼は罠にひっかかり、宝物を手に入れにくいだろう。しかしながら彼・彼女は旅行客らしく高い移動力を誇る。食料の重さは冒険者にとって非常に大きな問題であるが、彼らにはさほど問題ではない。また、冒険の最初からたくさんの食料と薬を持ち歩いているのも強みだ。もっとも薬の効用は最初のうちは飲んでみないとわからないが。弱そうな名前ではあるが、強力な武器防具も備えている。しかしながら観光客で冒険を進めるのは並大抵ではない。
　そして、これが本当に最後、もういよいよどうしようもなくなったらドークツから脱出（retire）したほうがいい。もし貴方がかなりの成果をあげているのなら、人々の記憶にしばしとどまるだろう。

　さあ、準備はいいだろうか？ドークツに入ろう…