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芸美短談
essays
インカの筆 1999年9月22日
現在のペルー共和国からボリビア、ブラジルにかけて南米の広い地域に、かつてインカ帝国と呼ばれる
高度の文明を持つ国家があった。このあまりに有名な魅力的帝国について、彼らが文字を持たなかった事を
ご存じの方はどの程度おられるでしょうか。
この帝国は数多くの金属工芸品や、染め織物、陶器に美術的にもすばらしい物を多く残しました。
石造建築や天文学などにも多くの当時の世界最先端技術が伺われます。しかし彼らは文字を持たなかった。
彼らは記録や伝達の方法としてひもの結び目を用いました。
1本の縄に様々な意味を込めた形の結び目を作りその組み合わせで文章を記録していました。
スペインのコルテスがその首都を占領しその図書館でこうした記録文縄を焼き討ちしたとき数百年の
インカの記録が数日間にわたって燃え続けたそうです。
文字を持たないこの事実は遠く日本から夢馳せていたころの大きな謎でしたが、地球の裏側のアンデス山脈に
抱かれたこの高地に降り立ったとき、その豊かでありながら高木の少ない、なだらかな丘陵に畑の散在する様子に
放牧されたリャマが草を噛む姿を見たあと、博物館で彼ら残した物を眺めながら1つの発見をいたしました。
まず彼らは木簡、紙や羊皮といった記録すべき台となる物を残していないし、其れを手に入れるのに多くの
労力を必要とすると思われる。染色で若干の利用をした以外に筆を用いなかった。
彼らは織物にきわめて優れた技術を持ち、そうした物が多く伝えられている。
また、はっきりとした絵画を残さずその伝統もない。
我々には当たり前ともいえる画材の主要な物が、大きくかけ落ちている生活が存在したことは世界の広さと文化の多様性と
また、制約もあることを思いいたさせられた。
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