芸美短談

essays

美しき場所「ズッカ」 1999年9月1日


イタリアのミラノ市にある、ガッレリアという歴史あるアーケードに「ズッカ」という名のカフェがある。

ドゥオーモ(市の中心教会)と中央広場を見渡すガッレリアの入り口の角にあるこの店には、かつて ギュセッペ・ヴェルディとアルトゥロ・トスカニーニが「ラ・スカラ」座での 公演のあとに立ち寄るお気に入りの場所で、ドゥドヴィッチとカーラはよくそこで朝まで過ごしたという。 アンベルト王一世も、そこで飲めるミラノ一のコーヒー目当てにたちよった。

ボッチオーニはその有様を絵に描き、そうした著名人が愛した「ズッカ」はいまでも訪れる人を 文化と歴史の中に引き込む”美しい場所”となったのです。

イタリアは旅行者にとってあこがれの地でありますが、ミラノ市はとかく半日観光で 「最後の晩餐」だけ見て通り過ぎる人が多いようです。

私はたまたま3日間この街に滞在できたのでこのすばらしいカフェに足を運ぶことが出来ました。
壁面のモザイク、象眼細工の横木、カップの並ぶ棚のどれもが芸術的価値を持ち 歴史を湛えて、其れで居ながら訪れたときには自然に身を置くことが出来ました。

早朝のすんだ空気が開け放たれた戸の向こうから流れ込むなか、一杯のカプチーノをのどに注ぐその幸せ。
芸術の、真に生きずきそして生まれ出る環境がここにあるのだと実感させるひとときでした。 (写真は壁面のモザイクタイル)


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