11月「3×8」




「秋といえば栗だよな」
「えー、柿だよぉ」
「何を言う!栗はおやつにもご飯にも使える万能アイテムなのだ!」
「『なのだ』って・・・」
「ともかく、あの地味な甘さがよい」
「そうだね、最近は『甘栗むいときました』とか売ってて食べやすいし」
「あんなモンは邪道だ!栗はイチイチむいて食べることに意義があるのだ!」
「『のだ』っても、皮むくのって結構面倒だし」
「じゃあ何かね、美香君。君は蟹は殻のない剥き身で食卓に出された方がいいのかね?」
「蟹?」
「あれは黙々と身を採取して、その努力の成果を食べることで美味さも倍増するというものだが?」
「蟹も殻が取ってあると楽だよね〜」
「・・・話にならん」
「えー」

「ところで、『桃栗三年柿八年』という言葉は知っているよな?」
「うん。『石の上にも三年』に似た意味だよね?」
「だな。長い年月で云々って点ではそうだ。で、桃と栗が3年、柿が8年でできるわけだ」
「うん」
「じゃあ、初めて同時に実が生るのは何年後だ?」
「えーと、3と8の最小公倍数だから24年後かな?」
「ふっふっふっ」
「あれ?」
「木の実は一度生ったら、毎年できるのだよ。だから正解は8年後」
「えー」
「ということで、俺がさっき買ってきた『甘栗むいときました』は独り占めに決定」
「ひどい〜、ずるい〜、うそつき〜、食べるんじゃ〜ん!」
「はっはっは、時と場合のよるのだよっ」


つづく

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