06月「梅雨」
タッ、タッ、タッ、タッ、ガラガラッ!
「お姉ちゃん、部活行こっ!」
「あっ、涼音」
「お、涼音。いいトコロに来た――――」
「傘なら貸さないわよ」
「・・・・・・」
「ふふふ・・・(にやり)」
「ま、まだ何も言ってないじゃねーか」
「じゃあ何よ?」
「傘、貸してくれ(きっぱり)」
「やだ(きっぱり)」
「いいじゃねーかよっ!減るモンじゃねーし」
「減るわよっ!私の手元からなくなるじゃない!」
「細かいなぁ」
「それにしても、この時期にたまたま朝降ってなかったってだけで、
傘持たないで出かけたりする?普通」
「荷物になんだよぉ」
「横着ねぇ。で、結果がコレ?(ふふん)」
「うるせーなぁ。いいから貸せよ〜」
「だからイヤよ。私の傘がなくなるじゃない」
「おまえは大丈夫だ」
「なんでよ?」
「足が速い」
「は?」
「雨粒の間をヒョイヒョイと走り抜ければ、あーら不思議、雨に濡れてない」
「そんなの無理に決まってるでしょ!加速装置使っても無理よ。
大丈夫な技はワープくらいなものね」
「よかったじゃないか方法が見つかって。ワープで帰れ」
「あんたがワープ使いなさいよ」
「そんなの常人には無理に決まってるだろ」
「なんて勝手な・・・」
「今頃気づいたか」
「はぁ・・・。まぁ100歩譲って傘を貸すとして――――」
「お、素直に貸す気になったか」
「私の傘、あんたの嫌いな黄色よ?」
「なに?」
「たしか『黄色い傘はバカっぽく見えるから不可』とか言ってたわよね?」
「当然だ。黄色い傘をさすくらいなら、濡れて帰るわ」
「変な拘りもって、バッカみたい」
「何とでも言え」
「でも、ところで何でお姉ちゃんに借りようとしないの?」
「ん?」
「元々私に傘貸せってのは『傘がなくても部活の友達とでも帰れば平気だろ』ってことでしょ?
まさか本気で『走って帰れ』とは思ってなかったでしょうね?」
「まぁ、そうだな」
「じゃあ、お姉ちゃんに借りても一緒じゃない。黒い傘だし都合いいわよ?」
「何を言っているのかね、涼音君」
「なに?」
「涼乃から傘を借りたら、涼乃の傘がなくなるじゃないか」
「そうね」
「涼乃が困るじゃないか」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ボクッ!
「げふっ!グーでパンチかよ・・・・・・」
「チョキでパンチが出せたら見せてほしいわっ(ふんっ)」
「不意打ちとは卑怯なり・・・」
くいくいっ
「ん?」
「この傘でよかったら使って?わたしは涼音と一緒の傘で帰るから」
「いや、でも――――」
「はい(ぽすっ)」
「あ・・・、悪いな」
「まったく、バカな幼馴染持つと苦労するわよね」
「うるさい」
「ふふっ」
―――下駄箱
「いや〜、これでダッシュで帰らなくてすんだな」
タッ、タッ、タッ、タッ
「おっ、美香?」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・お兄ちゃん」
「どうした、ダッシュで現れて」
「今お兄ちゃんのクラス行ったら、ついさっき出てったって言ってたから」
「で、何だ?」
「いっしょに帰ろ?」
「は?」
「お兄ちゃん傘持ってきてないでしょ?だから」
「そんなわざわざ・・・」
「だって風邪ひいたら困るじゃん」
「ん〜」
「ほら、帰ろっ」
ぼふっ
「ほ〜らぁ〜」
「はいはい(涼乃には悪いが傘は鞄にinだな)」
「傘は俺が持つよ。ありがとな」
「うんっ」
つづく
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