![]() <写真提供:のりちんの野外活動日記> △池沼での釣り 奥地にあるO湖(O池とも)は、日帰りでは難しいほどの、遠くて、難所な 所にある。 そのため、そこへ行くには寝袋が欠かせなかった。 その池沼は、ほぼ円形をした − 大きな鳥の飛ぶ姿とも − 水面の美しい、 穏やかな湖であった。 春5月初め、地元の猟友会員は、数人編成で熊狩りに出かける。SYSOPも一度同行させて もらったことがあった。O湖周辺の山岳一帯には、幾つかのお決まりの場所に 寝泊り用の仮小屋がある。 熊を探して、その仮小屋を転々と移動するのである。そのときは、小さめの熊を見つけたが、 あいにく逃がしてしまった。 ゼンマイ採りの季節になると、地元の山菜名人は、O湖に面した斜面で、 雪消えの後を追うように、夏頃までゼンマイを採っていた。勿論お決まりの場所に 寝泊り用の仮小屋を掛けて……。 白く濁った雪代水(ゆきしろみず)がO湖に注ぐ頃、寝袋を担いで、湖畔の 避難小屋に一泊した。 地下足袋を履いたまま、膝辺りまで湖水に浸かりながら、雪代水が流入するあたりで 釣っていたら、魚信があった。銀色に輝いたヒメマスであった。身を切られるような 冷たさにも拘わらず、喜び勇んだものであった。 雪代水が池沼や河川に合流する辺りでは、ヒメマスに限らずウグイやヤマメも 盛んに餌を漁っている。このときの釣り方は、ミミズやブドウムシなどを付けた釣り糸を 流水に逆らうように、ゆっくりと遡らせるとよい。 さて、ここO湖での釣りの醍醐味は、ボートからのイワナ釣り − 勿論毛ばり釣り − である。頃合いは、やや陽が西に傾いた時がよい。ボートを岸から10m位離して、 岸に沿ってゆっくりと進めて行く。釣り人は思い思いに、岸辺に向って毛ばりを投げ込む。 すると、湖底からスルスルッと垂直にイワナが上ってきて、パクリ……。 釣り名人は、小一時間で数十匹も釣ることがあると云う。 たまには、ヒメマスも銀鱗を躍らせる。正に、毛ばり釣りの境地を満喫できた、 ひと時であった。 この湖には、イワナが過密状態のように生息しているようであった。 釣れるイワナの大きさや肉付きは、決して上物ではなかった。 晩秋になると、湖の水門(出口)辺りでは、何匹かの大イワナが、口にあまるほど の魚卵を頬張っているのが確認された。 |