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大湯環状列石:〔51〕十和田湖の噴火とは?

△十和田湖の成り立ちと平安時代に起こった大噴火
参考(引用):早川由紀夫研究室(群馬大学教育学部)
 
(1) 十和田湖の成り立ち
 十和田湖は火山である。火山というと、富士山や浅間山のような円錐形に盛り上がっ た山を連想するかもしれないが、周囲より窪んだ地形をなす火山もある。そのひとつが 火砕流の噴出にともなって生じる陥没カルデラであり、十和田湖はその好例である。北 海道の屈斜路湖・支笏湖・洞爺湖、九州の阿蘇も陥没カルデラである。陥没カルデラの まわりには、大量の火砕流堆積物がかならず分布している。
 
 十和田湖のまわりには、奥瀬火砕流(Q, 4万3000年前)、大不動火砕流(N, 3万0000 年前)、そして八戸火砕流(L, 1万5000年前)の堆積物が分布している。白いシラスの 崖で縁取られた火砕流台地は、青森県十和田市や秋田県鹿角市などでみることができる。
 
 火砕流は、時速100km以上のスピードでジェットコースターのように山野を疾走した。 とくに大不動噴火と八戸噴火では、十和田湖から50kmまでの地表が隈なく焦土と化した。
 
 奥瀬噴火によって十和田湖の地下から噴出したマグマの量は100億トンだった。大不 動噴火と八戸噴火では、それよりさらに多い500億トンずつが噴出した。これだけ大量 のマグマが噴出したにもかかわらず、それに要した時間はわずか数時間だった。
 
 状況証拠からいって、大規模火砕流の噴出と陥没カルデラの形成との間には密接な関 係があることが確かだが、両者の具体的な因果関係は、本当のところ、まだよくわかっ ていない。大量のマグマが抜き取られて生じた地下の「空洞」にマグマだまりの天井が 落ち込む(陥没)という伝統的な考えのほかに、激しい爆発によって地表ふきんの岩石 が吹き飛ばされることが重要だという意見もある。また最近では、カルデラの陥没がマ グマだまりの圧力を解放してマグマをいっせいに発泡させたために大規模火砕流が噴出 したとみる逆転の発想も提出されている。
 
 カルデラができる前の十和田湖全体を、富士山のような大円錐火山がおおっていた証 拠はない。カルデラの北壁と西壁には第三紀のグリーンタフが露出しているから、カル デラ形成前のそこは非火山性のごくふつうの山地だった。
 
 湖の南岸と東岸には、50万年前ころに北隣の八甲田山から流れてきた石ヶ戸(いしげ ど)火砕流の堆積物が露出している。これがつくる火砕流台地が、カルデラ形成前の南 東半分には展開していた。
 
 石ヶ戸火砕流の堆積物は溶結して堅い。崩れやすいシラスからなっている十和田湖の 火砕流堆積物とみかけが大きく異なる。溶結とは、高温状態の火砕堆積物が自重でつぶ れて密度を増すことをいう。奥入瀬渓谷の両岸に露出する石ヶ戸火砕流堆積物は整然と した柱状節理をもち、溶岩とみまちがえるほど強く溶結している。銚子大滝をはじめと する多数の滝はこの石ヶ戸火砕流堆積物にかかっている。
 
 発荷(はっか)峠と青ぶな山にだけ、石ヶ戸火砕流堆積物の上に生じた火山の残骸が 認められる。この二箇所には、十和田湖の東方にそびえる十和田山や十和利山に似た中 型の円錐火山(発荷火山と青ぶな火山)がカルデラ形成前にあった。
 
 八戸噴火のあとまもなくカルデラ内の南寄りで噴火が再開した。そのとき地表に現れ たマグマは、SiO2含有量が18%も低下した玄武岩だった。
 
 玄武岩マグマの噴火は、短い休止を挟みながら1000年ほど続き、小型の円錐火山であ る五色岩(ごしきいわ)火山をつくった。休屋(やすみや)から湖上遊覧船にのると、 まず恵比須島・甲島・鎧島を訪れる。それらは不規則に曲がった柱状節理をもつ溶岩か らなる島である。これは水冷によってつくられた構造だから、五色岩火山の形成末期の 十和田湖の水面の高さが現在(海抜400m)よりやや高かったことがわかる。
 
 1万3000年前ころから、噴出するマグマのSiO2が増えはじめ、安山岩をへてデイサイ トに戻った。これに呼応して噴火の間隔が間遠になった。噴火様式は爆発的になり、高 い噴煙柱をつくって軽石や火山灰を広範囲にまき散らすようになった。五色岩火山体の 成長は止まり、逆に噴火のたびに中心火口が浸食されて拡大するようになった。
 
 瞰湖台(かんこだい)に露出する厚さ40mの粗粒軽石層は9500年前の南部噴火の堆積 物である。基底近くの一部の層準は溶結し、つぶれた軽石塊は黒曜石に変化している。 この南部軽石は、厚さ10cmの細粒軽石層として三陸海岸の種市町でもみつかる。
 
 瞰湖台の眼下にある烏帽子岩は、堅い岩石が中心火道の浸食に堪えて烏帽子のような 形状で残ったものである。これは、五色岩火山の地下でマグマが中心火道から側方に移 動した通路(ダイク)である。五色岩火山の放射ダイクは、このほかに日暮崎・自篭 (じごもり)岩がある。
 
 6300年前の中掫(ちゅうせり)噴火では、70億トンのマグマが噴出した。この噴火末 期に、五色岩火山の中心火口の壁が取り払われて外湖とつながる事件が起こった。爆発 によって北側火口壁の一部が切断された瞬間、湖水が一気に火口内に流れ込んだ。こう して中湖(なかのうみ)が生じた。
   流れ込んだ湖水はマグマとダイナミックに接触して、激しい水蒸気マグマ爆発が起こ った。宇樽部の旧小中学校跡地にみられる成層したシルト層は、このとき発生した横な ぐりの爆風(サージ)の堆積物である。火口内に勢いよく流れ込んだ湖水が刻んだ谷は、 いまも湖底に残っている。
 
 湖面にわずか頭を出す御門石(ごもんいし)は、カルデラ形成後に生じた溶岩ドーム である。同時に噴出した火山灰がまだ知られていないので、この噴火がいつ起こったか わからない。
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