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歌枕の「錦木(錦織木)」とは

 
歌枕の「錦木(錦織木)」とは
 
 「錦木ニシキギ」とは、岩波書店発行「広辞苑第五版」に拠ると、
 
 五色に彩った30pばかりの木片。
 昔の奥州の風習で、男が女に逢おうとする場合に、女の家の門に立てて、女に応ずる 心があればそれを取り入れ、取り入れなければ男がさらに加え立てて千束を限りとする と云う。
 山家集「立てそめてかへる心は錦木の 千束チヅカまつべき心地こそせね」
 
と説明されている。
 
 また、「錦木」とは、笠間書院発行「歌枕歌ことば辞典」に拠ると、
 
 植物学的には各地の山野に自生する高さ二米程の落葉樹を云うが、和歌に詠まれるの はそれではない。
 『俊頼髄脳』などの歌学書に拠れば、昔、陸奥で、男が女に求婚する時、その女の家 の門に彩色した薪木タキギを一束立てると、女は応ずる意志があればそれを取り入れ、応 ずる意志がなければ取り入れない。求婚を受け入れられなければ男は千束を限りとして 三年間あきらめずに毎日それを立て続けると云う。
 
 錦木は千束チヅカになりぬ今こそは 人に知られぬ閨ネヤの内見め(俊頼髄脳)
 大意:私が立てた錦木は千束になった。今こそは他人では知ることの出来ぬあなた の寝室の中を見たいものだ。
 
 錦木は立てながらこそ朽ちにけれ 今日の細布胸あはじとや(後拾遺集・恋・能因)
 大意:錦木を立てたままで朽ちてしまったよ。今日の細布は胸が合わないだろうと 思ってか。「細布」は奥羽地方特産の幅の狭い布と云う。詳しくは分からな いが、この歌から見ると、細身の衣がうまく胸で合うと恋愛が成就すると 云う俗信があったと見るほかはなかろう。
 
など、その伝承によって読まれた歌は多い。
 
と説明されている。
 注:「今日ケフ」は、狭布やけふなどとも書き表される。SYSOP
 
 一方、北隆館発行「牧野新日本植物圖鑑」に拠ると、
 
 サワフタギ(ニシゴリとも) ハイノキ科
 北海道、本州、四国、九州の山地に生える落葉の低木、高さ2.5m位、多く枝分かれし て葉も沢山付く。葉は3〜8oの短い柄を持ち互生し、倒卵形で縁ヘリには小さい鋸歯があ り、両面は常にざらざらして短毛がある。5月頃、新しい枝の上に新しい葉と共に円錐 花序になって、沢山の白い細かい花を密生する。萼は小さく緑色で5裂する。花冠も深 く5裂し径7〜8o、梅の花に似ている。雄蘂は多数で花冠より少し長く、雌蘂は1本で ある。秋、長さ6〜7oの歪ユガんだ球形の核果を着け、熟すと藍色となる。
 「日本名サワフタギ」は、多分沢蓋木の意味で、沢の上に生い茂って、沢を覆い隠す ことから出たと思われる。またニシゴリとはニシッコリとも云い、錦織木の意味である。 これは灰汁を主として紫根染に用いたため出来た名と思われる。
 
と説明されている。
 また山と渓谷社発行「日本の樹木」に拠ると、
 
 サワフタギ沢蓋木(ルリミノウシコロシ・ニシゴリとも) ハイノキ科ハイノキ属 (落葉低木〜小高木)
 山野に生え、高さ4〜6mになる。樹皮は灰褐色で浅く縦に裂ける。葉は互生し、長さ4 〜8pの倒卵形又は楕円形、先端は短く尖り、縁フチには細かい鋸歯がある。5〜6月、本年 枝の先から長さ3〜6pの円錐花序を出して白い花を密に着ける。花冠は直径7〜8oで5 深裂する。雄蘂は多数、雌蘂は1個。果実は長さ6〜7oの歪ユガんだ卵形で藍色に熟す。
 用途 器具材、細工物、木灰は媒染剤
 分布 北、本、四、九、朝鮮、中国
 
と説明されている。
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