△古事記 上巻 葦原之千秋長五百秋之水穂国
 
 天照大御神のお言葉により、
「豊葦原(とよあしはら)の千秋(ちあき)の長五百秋(ながいほあき)の水穂の国は、 私の御子の正勝吾勝勝速日(まさかつあかつかちはやび)天の忍穂耳(おしほみみ)の命 の領有支配される国である」
と統治を委任なさって、高天の原からお降しになった。そこで、天忍穂耳命は、天の浮 橋にお立ちになって仰せになるには、
「豊葦原之千秋長五百秋之水穂国は、いたく騒いでいる音が聞こえる」
と仰せになって、また帰り上られて天照大御神に申し上げた。
 
 このようなことで、高御産巣日神と天照大御神のお言葉により、天安河の河原に八百 万神を集めに集めて、思金神に考えさせて仰せになるには、
「この葦原中国は、私の御子が支配する国として委任した国である。ところで、この国 には激しくて乱暴な国神(くにつかみ)らが沢山居ると思われるので、どの神を遣わし たらよかろう」
と仰せになった。
 これを受けて、思金神と八百万神が相談し合って、
「天菩比神、この方を遣わそう」
と申した。
 故に天菩比神を遣わしたところ、やがて大国主神にへつらって、三年たっても復命し なかった。
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