△古事記 上巻 伊耶那岐神・伊耶那美神
 
〈火神を斬る〉
 そこで、伊耶那岐命は身に着けていた十拳の剣を抜いて、その子迦具土神の頸(くび) をお斬りになった。するとその剣の先に付いた血が、神聖な石の群れにほとばしりつい てお成りになった神の御名は、石析(いはさく)の神、次に根析(ねさく)の神、次に 石筒之男(いはつつのを)の神である(三神)。
 次に剣の鍔(つば)に付いた血も、神聖な石の群れにほとばしりついてお成りになっ た神の御名は、甕速日(みかはやび)の神、次に樋速日(ひはやび)の神、次に建御雷 之男(たけみかづちのを)の神、亦の御名は建布都(たけふつ)の神、亦の御名は豊布 都(とよふつ)の神である(三神)。
 次に剣の柄に集まる血が、手の指の間から漏れ出てお成りになった神の御名は、闇淤 加美(くらおかみ)の神、次に闇御津羽(くらみつは)の神である。
 以上の石析神から下、闇御津羽神より前の合わせて八柱の神は、御剣によってお生ま れになった神である。
 
 殺されてしまわれた迦具土神の、頭にお成りになった神の御名は、正鹿山津見(まさ かやまつみ)の神、次に胸にお成りになった神の御名は、淤縢山津見(おどやまつみ) の神、次に腹にお成りになった神の御名は、奥山津見(おくやまつみ)の神、次に男陰 にお成りになった神の御名は、闇山津見(くらやまつみ)の神、次に左の手にお成りに なった神の御名は、志芸山津見(しぎやまつみ)の神、次に右の手にお成りになった神 の御名は、羽山津見(はやまつみ)の神、次に左の足にお成りになった神の御名は、原 山津見(はらやまつみ)の神、次に右の足にお成りになった神の御名は、戸山津見(と やまつみ)の神である(正鹿山津見神より戸山津見神まで、併せて八神)。
 そして、火神をお斬りになった剣の名を天之尾羽張(あめのをはばり)と云う。亦の 名は伊都之尾羽張(いつのをはばり)と云う。
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