△古事記 中巻 品陀和気天皇(応神天皇)
 
〈宇遅能和紀郎子〉
 ここに、大雀命と宇遅能和紀郎子との二柱が、皇位をお互いに譲り合っている間に、 海人が食料を奉った。すると兄は辞退して弟に奉らさせ、弟はまた兄に奉らせて、譲り 合う間に、すっかり日にちが経ってしまった。このように譲り合うことが一度や二度で なかったので、海人は既に往来するのに疲れて泣いてしまった。
 故に、諺に、
「海人なれや、己が物から泣く」
と云うのである。
 
 しかしながら、宇遅能和紀郎子は早くにお亡くなりになった。
 故に、大雀命が、天下をお治めになった。
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