△古事記 中巻 帯中日子天皇(仲哀天皇)
 
〈酒楽の歌〉
 さて、(都に)帰り上られたときに、その御祖(母親)の息長帯日売命が、待ち酒を 醸して(太子に)献上された。そして、その御祖の御歌、
「この御酒(みき)は わが御酒ならず
くしのかみ 常世にいます
石立たす 少名御神の
神寿ぎ 寿ぎくるほし
豊寿ぎ 寿ぎもとほし
まつりこし御酒ぞ
あさずをせささ」
 
 このように歌われて、大御酒(おほみき)を献上した。
 ここに、建内宿禰命は、太子にお代わりになってお答え申し上げた歌、
「この御酒を 醸みけむ人は
その鼓 臼に立てて
歌ひつつ 醸みけれかも
舞ひつつ 醸みけれかも
この御酒の 御酒の
あやに うただぬしささ」
 これは酒楽(さかくら)の歌である。
 
 帯中津日子天皇の御年は、五十二歳である(壬戌年の六月十一日にお亡くなりになっ た)。御陵は、河内の恵我(ゑが)の長江(ながえ)にある。
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