△古事記 中巻 大帯日子淤斯呂和気天皇(景行天皇)
 
〈美夜受比売〉
 その国から科野(しなぬ、信濃)国に越えて、そのまま科野坂神を服従させて、尾張 国に帰って来られて、先日約束した美夜受比売の許へお入りになった。
 さて、(比売が)ご馳走を差し上げたときに、美夜受比売が酒盃を捧げて献った。こ こに、美夜受比売は外衣の裾に月経(さはりのもの)がついていた。そこで、その血を 見て(倭建命が)御歌をお詠みになられるには、
「ひさかたの 天の香久山
とかまに さ渡る鵠(くひ)
ひはぼそ わやがひなを
まかむとは あれはすれど
さ寝むとは あれは思へど
ながけせる おすひの襴(すそ)に
月たちにけり」
 
 そこで、美夜受比売は、御歌に答えて歌うには、
「高光る 日の御子
やすみしし わが大君
あらたまの 年がきふれば
あらたまの 月はきへゆく
うべなうべな 君待ちがたに
わがけせる おすひの襴に
月たたなむよ」
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