△古事記 中巻 神倭伊波礼毘古天皇(神武天皇)
 
〈忍坂〉
 (宇陀から)お出でになって、忍阪(おさか)の大室(おほむろ)に到着されたときに、 尾のある土蜘蛛(つちぐも)の八十建(やそたける、多くの獰猛な軍人)がその室に居て、 待ち構えていた。よって天神の御子のお言葉により、八十建にご馳走を賜わった。その折、 彼ら全てに割り当てて沢山の料理人を配して、料理人各自に刀をつけさせ、その料理人 らに、
「歌を聞いたら、一斉に斬れ」
とお教えになった。
 
 そして、その土蜘蛛を討とうとすることを知らせた歌は、
「忍坂の 大室屋に
人多に 来入り居り
人多に 入り居りとも
みつみつし 久米の子が
頭椎い 石椎い持ち 撃ちてし止まむ
みつみつし 久米の子らが
頭椎い 石椎い持ち 今撃たば宜らし」
 
このように(天皇軍が)歌って、刀を抜いて一斉に(土蜘蛛を)打ち殺した。
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