△古事記 下巻 穴穂天皇(安康天皇)
 
〈王子たち〉
 そこで、市辺王の王子たち、意富祁(おほけ)の王、袁祁(をけ)の王(二柱) は、この乱(みだれ)を聞いて逃亡された。さて、山代の苅羽井(かりはゐ)に到着さ れて、お粮(みかれひ、乾飯・食事)をされているときに、顔に入墨をした老人が来て、 その粮を奪った。そこでその二人の王は、
「粮は惜しくはないが、汝(いまし)は誰であるか」
と仰せになったところ、
「我は、山代の猪甘(ゐかひ)である」
と申した。
 故に、(二王子は)玖須婆(くすば)の河を逃げ渡り、針間(はりま)の国に行かれ、 その国の人、名は志自牟(しじむ)の家にお入りになって、身分を隠して、馬甘牛甘 (うまかひうしかひ、馬飼い牛飼い)として使役なされたのである。
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