△古事記 下巻 大雀天皇(仁徳天皇) 〈雁の卵〉 またあるとき、天皇が豊楽(とよのあかり、新嘗祭)をされようとして、日女島にお 出でになったときに、その島に雁が卵を生んだ。そこで建内宿禰命を召して、御歌で雁 が卵を生む状をお尋ねになった、その御歌(みうた)、 「たまきはる 内の朝臣 なこそは 世の長人 そらみつ 大和の国に 雁卵生と 聞くや」 ここに建内宿禰は、歌で語って申すには、 「高光る 日の御子 うべしこそ 問ひたまへ まこそに 問ひたまへ あれこそは 世の長人 そらみつ 大和の国に 雁卵生と いまだ聞かず」 このように申して、琴を賜って歌うには、 「なが御子や つひに知らむと 雁は卵生らし」 これは、本岐歌(ほぎうた、寿歌)の片歌である。 |