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12 土深井裸まいり

(四)祓えの神事
 着替え室の前のたたき(土間)には、シートを敷いて祭場とする。
 その中央を神前として、座机が据え置かれてある。座机には、締め飾り
を張った朱塗りの柳樽、注連縄五本、ロウソク二本、お神酒二升(二本)
と盃(コップなど人数分)、塩、口紙、細縄などが供えてある。
 柳樽にはお神酒が入っており、巡拝神社の神前に奉るもの、注連縄はそ
れらの神前、すなわち稲荷神社、唐松神社、八幡神社、駒形神社、山神社
の神前に張り渡すもの、ロウソクは稲荷神社の神前に灯すもの、お神酒と
塩は男衆が裸まいりの無事を祈って元気づけにいただくもの、口紙は男衆
が口にかむもの、細縄は大注連縄を鳥居に結わえつけるときに用いるもの
、などである。
 座机の周囲には、大注連縄がとぐろを巻くように、左回りに巻いてある。
今回の大注連縄は、末の方がやや長く感じられた。その大注連縄の中央の
太いところには、幣束三本と牛蒡締め一本が添えられている。幣束の紙垂
切り方は、半紙半分を四垂れに切り、折り方は白川流のようであった。
 たたきの周囲には、団旗や四本の旗がを添えられている。
 
 やがて、身支度を終えた男衆など関係者が集まり、祭場を取り囲んで整
列する。
 土深井の裸まいりは、昔から黒足袋を履くこととされているが、現在で
は白足袋を履いている男衆も見られる。黒足袋は通常、旅というか、外出
というか、外を出歩くときに履くこととされる。ところが、全国各地の裸
参り、または裸祭りにおいて履く足袋は、黒足袋もあり、白足袋もありま
ちまちである。
 なお、神職がお祭りに奉仕するときの足袋は、常に、こざっぱりした白
足袋を用いることとされている。
 
 宮司は、狩衣に差袴、烏帽子を身に著けている。足下は雪道に備えての
装いである。
 宮司は、祓詞を奏上する。この間、男衆、世話人など関係者一同は合掌
して軽いお辞儀、すなわち低頭している。祓詞奏上が終わると、宮司に合
わせて関係者一同は拝礼する。拝礼の仕方は、二拝二拍手一拝の作法であ
る。すなわち「二度深く拝礼し、次ぎに両手を合わせて二度拍手し、もう
一度深く拝礼」することである。
 
 そして宮司は、大麻により座机に供えた品々や、大注連縄などを祓い、
次いで関係者一同を祓う。
 大麻(大幣とも)とは、木(又は細竹)の棒に、半紙を細く紙垂状に切
って、たくさんくくりつけたもので、神前に捧げるものを清浄にするため
に祓うものである。
 日本人は古来、神前に進み出るとき(又は貴人に仕えるとき)は、禊や
水垢離、また大麻や塩湯、切麻などで祓いに祓い、清めに清める、という
伝統がある。したがって神道は古来、「祓え(の宗教)」であるともいわ
れいる。
 さて、宮司が大麻で左右左と三度祓っているときは、関係者一同は低頭
することとなる。
 
 お祓いの神事が終わると、裸まいりの無事と元気づけにお神酒をいただ
くことになっている。酒豪の男衆は二、三杯もいただくとのことであるが、
飲み過ぎると、途中で酔いが回り、参道の急な坂道で膝にこたえることも
あるという。
 世話人などからは、事故が発生しないよう、いろいろと心得が言い伝え
られる。
 
 ここで男衆各人は、口に口紙をかむこととなる。口紙は、この行事の初
めから終わりまでかんでいなければならない。
 なお、口紙をかむということは、みだりにしゃべってはならないことで
あり、神聖な大注連縄や神への供え物に、不浄な息を吹きかけてはならず、
また、息をはくことによって、「気が枯れる(穢れる)」とされるなど、
口紙の意義について、宮司からも話される。
 裸まいりの途中で口紙が破れたときのために、宮司は予備の口紙を懐に
しているとのことである。
 なお、宮司はあらかじめ、水垢離場の注連縄などは祓っておき、また口
紙には祈念を施すなど清浄にしてある。

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