現在では、麻を栽培するには、許可(大麻が取れるため)を要するが、
以前は、どこの家でも、麻を栽培していた。 麻から採れるカツチョ(麻苧)は、いろいろな荷造り縄の材料として、 またアサイド(麻糸)では、衣服や蚊帳を織った。 夏になると、六尺ほどに生長した麻を刈り取ってくる。 親戚などでは、前庭にある土壁造りの大きなカマドには大釜が据えられ、 その上に、直径二尺ほど、高さ六尺超の細長い杉桶を載せ、中に 刈り取ったばかりの麻を詰め込んで、煮る(蒸かす)のであった。 やがて頃合いを見計らって麻を取り出し、家の前を流れるセギ(堰)に 晒す。その後、皮をはぐ。はいだ皮はカッチョやアサイドとなり、残った茎は オガラとなる。 オガラは屋根裏などに大事に保管しておき、ヤドコ(萱屋根葺き)のとき、 軒先の下地に用いる。オガラは、水はけがよくて腐りにくいのと、 その厚さ薄さで家の風格を左右する、など重要な役目を果たす。 現在の松館天満宮三台山獅子大権現舞で舞われる権現舞の幕(衣装)は、 私の叔母佐藤トミの織った麻の織物である。 |
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