「松館今昔:風物詩」

タギギ割り

 山元でタギギ(薪)を五尺に伐ると云うことは、国有林では樹木を販売するとき、 六尺以上だと用材として算定(評定)され、売値も結構高い。 しかし薪炭材として算定すると、極端に安値になる 。そのためには、売買契約上の決まりとして、タギギとして買った樹木は、 六尺未満(つまり五尺)に伐ることが義務付けられるのであった。
 その頃のタギギ山(委託林=共用林)は、 黒沢頭(くろさわがしら)の国有林であった。
 
 五尺に伐ったタギギを自宅まで運び、それを半分に切り、 適宜の太さに割るのである。この作業は、固雪の頃とか、春雨で若芽が赤く 芽生えようとする雪上で行ったものであった。
 伐ったばかりの、生のタギギの方が、乾いたタギギよりも、ノゴギリ(鋸)で切るのも、 マサガリ(鉞)で割るのも楽であったようだ。
 この作業は、帰宅後とか、休日での私の日課であった。
 
 そのタギギを入れるタギギ小屋として、ほとんどの家には、間口が一間半乃至二間、奥行きは任意の建物が建っていた。
 タギギの長さは二尺五寸なので、ヒビド(囲炉裏)もそれに見合うように、 三尺四方もあったと記憶する。
 その後、ヒビドには薪ストーブが置かれるようになったので、 タギギの長さも、二尺五寸のものを更に二等分、又は三等分に切断して、割った。

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