「松館今昔:風物詩」

門松

 松館辺りは、その名の如く「マヂ(赤松)」の産地である。マヂは、痩せた 土地に生えるので、マヂを伐った跡にシギ(杉)を植林すると、なかなか生長 しない。シギの造林木が十数年経って、梢に芯が立ってくると、 それからはどんどん生長する。
 
 さて、松館の山は、ハヤシノサ(林の沢)以外は、ほとんど部落有の採草地(萱野) や雑木山であった。採草地の峰筋には、門松には手頃なマヂが沢山生えていた。
 年末になると、子供たちはめいめい、ナダ(鉈)を腰につけて、 ケンヂギ(かんじき)を履いたり、スキーを履いたりして、思い思いのマヂを二本 伐り倒し、縄で結んで引っ張ってくる。途中でササパ(クマザサ)も採った。
 
 マヂを引っ張ってきた「ユギ(雪)のアドカダ(跡形)」は、 それぞれのカドグヂ(門口)へ吸い込まれてゆく。

[次へ進む]  [バック]  [前画面へ戻る]