「松館今昔:風物詩」

寒干し

 寒干しとは、まず、デェゴ(大根)を大体長さ10cmで5cm角ぐらいに切って、茹でる。 それに横穴を通すようにして、タダミパリ(畳針)につけた 手綯いの細い荒縄を通してゆく。一本の縄に十数個を通す。 それを「通り」のセギ(堰)に何日か晒す。その後、軒先に吊るして干す。 これは、寒中に作るので、「寒干し」と呼んでいる。
 
 セギには、いつも綺麗な水がとうとうと流れていた。だから、よく 年寄りに言われた、「カワでションベせば、シンジ曲がる」と。
 
 寒干しは、味噌汁にしたり、煮付けや煮物によく、味がしみて、殊のほか 美味しかった。今では、季節になれば店で売っているようになった。以前、帰郷して 食べようとしたが、探すのに苦労したことがあった。
 
 大根を煮るときの湯気と香り……、
 ユギ(雪)を被りながら、セギを泳いでいるデェゴたち……、
 軒先につるしてある寒干し……。

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