サゲ(酒)と云えば、濁酒(ドブロク)のことである。 サゲ造りは、もっぱら母の役目であった。飲むのも母であった。 ときどき、米麹とか、イースト菌などを 花輪の造り酒屋に買いに行かせられた。 サゲは、まず甘酒を造り、それをコガ(杉桶)入れ、おこわや水、イースト菌を 混ぜて保温する。保温が過ぎると、酸っぱくなる。 家々によって、サゲの濃度や甘辛が異なる。サゲ好きと云うか、サゲ呑みと云うか、 そう云う家で造ったサゲは、濃くてきついサゲであったらしい。 濁酒は法に触れる密造酒なので、それを取り締まるサガカニ(酒官吏か)がときどき 見回りに来る。すると、電灯が点滅する。「サガカニが来たぞ」と云う合図であった。 当時の電灯は、「○ワット一灯でいくら」の定額制であったので、 日中でも灯していた。 あるとき、わが家でもとうとうサガカニに見つかってしまった。密造犯人は、 祖母にされてしまった(真犯人は母であったが)……。 |
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