「松館今昔:水辺の幸」

田や沼

一、チブ
 チブ(ツブ)は、代掻き(しろかき)などを終えた田んぼに、 ニョロニョロ、スーイスーイと軌跡を描く。 その頃から晩秋まで、「チブ拾い」が出来る。
 人里近くの田んぼや沼、湿地帯などには、どこにもいた。美味しかったと思う。
 
二、ドンジョ
 ドンジョ(ドジョウ)は、よくドで捕った。
 ドとは、うけ(筌):細く割った竹を編んで筒形あるいは籠状に作り、 水中に沈めて魚・エビなどをとる漁具。入ったら出られないように返しがついている。 ど。せん。ふせご。たつべ。もんどり。うえやな。うえ(goo辞書)。
 
 ド掛けは、梅雨時に行う。夕方、ドの尻に、匂いのするニラ(韮)とか、酒の粕などを 挟んで、田んぼの水口に仕掛けるのである。ドンジョは水流に逆らって上る習性があるので、 ドの口を下方に向ける。翌朝に見回って、捕ってくるが、ゲンゴロウやアカハラなども 入っていたものである。
 
 ドンジョスクイ(泥鰌すくい)は、ヒドロ(後ロ田)の田の尻の小川、下モ川、 下タ川(黒沢川)であった。
 ときには、フルガンジェギ(古川堰か)へ行くこともあったが、この堰は私の縄張りの 外、つまり、余所の領分につき、行くことを禁じられていたような気がする。 冷たい清流が流れていて、ヨコエビは勿論、川エビや川ドンジョもいたような 気がする。
 
 秋の収穫が終わると、ヒドロの田んぼでのドンジョ掘り(泥鰌掘り)であった。
 ヒドロの田は湿田なので、秋でも冬でもチブやドンジョがいる。 稲刈りが近づくと、田んぼから水を落として、抜からないないようにする。 そうすると、チブは蓋(ふた)を上にして、土の中に潜っており、 土の表面が数ミリほど凹んでいる。チブがいることが分かる。
 ドンジョも土に潜っている。その大小により、土の表面に、 呼吸のための大小の穴が空いているので分かる。
 水口の落ち口は深くえぐれて水が溜まっていたりするので、沢山のドンジョがいた。
 楽しいドンジョ掘りであった。隣りの田んぼ(石鳥谷の人の田)でも捕ったりした。
 
 チブやドンジョたちは、このように土に潜り込んで越冬する。 春になって、カッチャ(田んぼ用の鍬)で田打ちをすると、 ドンジョたちも出てくるが、田打ちの頃は、田んぼが湿っていたり、 水があったりして、なかなか捕まえることは出来なかった。
 
三、フナッコ
 ノヂギ(野月)のマルチヂミ(丸堤)へは釣りに行った。フナッコ(鮒)が 釣れたと思う。
 マルチヂミは青年会で管理運用し、 田んぼへの水利を調節していたらしい。また堤の中に鯉を養殖していた。 確か晩秋に堤を干して、大きくなった鯉やフナッコを捕っていた。

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