端午の節句(旧暦五月五日)の頃は、若葉の季節である。 節句になると、近くの小川の縁から菖蒲(しょうぶ)や蓬(よもぎ)を採ってきて、 窓や出入口のある軒に刺した。私の家は萱葺き屋根で、庇(ひさし)などは、杉皮葺き であった。 この謂れは古来、菖蒲や蓬は邪気を払う作用があると考えられていたので、これらを 軒に刺すと、その家に悪魔や疫病が入り込まないのだと……。 また、外に建ててある風呂場の水風呂(ひふる)に菖蒲を入れて、入った。 水風呂の焚口(燃焼筒)は、いわゆる鉄砲で、上から薪を投入して焚くものであった。 菖蒲のほのかな香りが、湯の中に漂っていた。 |
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