「松館今昔:松館の行事今昔」

もーし(もうす)

 昔、ここら辺りの大人たちは、冬期間、奥山に行って、寝泊りして山仕事 − 木を伐ったり、炭を焼いたり − をしていた。山へ行くに当たって、 山の神にお参りするときに、感謝や祈願を「申し上げる」「お願い申す」。 これが「もーし(もうす)」の謂れと云う。
 
 「もーし」は、青年会の行う伝統行事であった。「もーし」は数日間続けられる ので、濁酒造りやら、食材の調達など、当番宿は大変なものである。男の当番は 二人で、どちらかが宿を勤める。
 日にちは新暦十一月二十八日、当番は近くの川で水垢離(みずこり)をとり、 当番宿の床の間で神事を行う……。
 「もーし」の数日間(正味3日以上)は一切働かない。自分たちで食べる料理を 作ったり、それを食べたり、濁酒を飲んだり、酔っ払ったり、歌ったり、踊ったり、 眠ったり、また起きたり……。
 「もーし」期間中には、厳しい掟がある。例えば、時間に遅れたり、与えられた 物の飲み残したり、食べ残したり……。そんなときは……。
 
 一方には、女たちの「もーし」が行われている。男の宿と、女の宿とをそれぞれ 相互に訪問しあって、余興を演じたり、食べたり飲んだり……。

 「もーし」の娯楽性を「よし」として、その後、各階各層に広がり、例えば、各々の 同年齢層とか、仕事仲間同士とか、いろいろな人たちがそれぞれ「仲間っこ」を 作って、「もーし」を楽しむようになってきた。この時期はまた、一年の収穫作業も 終わった頃である。
 
 「もーし」の料理は、手作りが原則であった。食材を探したり、味付けを工夫 したり、これも当番の腕の見せどころでもあった。しかし最近では、「のんびり休養 型」指向になったのか、「温泉で一泊」が主流となったようである。

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