ここ松館の墓参りは、新暦八月十三日には下田家、他は十四日の朝早く行っている。 真新しい浴衣を着たり、下駄を履いたり、また郷里に帰ってきた子弟たちと一緒に 仲良くお参りする。お供え物は、季節の物を料理して五重に詰め、またおこわや お菓子にお茶、はたまた祖霊(新仏)の好物であったお酒なども供える。 併せて、近い所にある親戚の墓にも供える。 私の家の墓地はただ一軒、下モ川を挟んで(元)水無にある。墓地への経路も、 他の家はと異なり、自宅を出て十文字目〜上ミ坂〜下タ通りで、葬式のときも、 この経路である。 各墓石や墓穴にそれぞれお供えして、拝んで回る。 自分の家の墓参が終わると、無縁の墓地へも供える。無縁の墓地は当家の墓地に 隣接している。県道拡張での補償金により。母が小さめの墓石に、 「凶作の霊塔」と刻して建ててある。昔、ここら辺りに、飢饉で亡くなった人たち (いわゆる行き倒れ)の亡骸(なきがら)を埋葬したとされる。 最後に、村の無縁仏にも供える。ここでは、仏教形式のお参り、つまり手を叩かないで、 両手を合わせて拝む。 我が家では、他家よりも遅れて墓参に出かけることが多いので、縁りの家の人が 既に我が家の墓地にお供えしていることがあった。 我が家の供え物は、だいたい上記と同じあるが、神道故にお茶は持参しない。 現在の供え物は、幣束、花、干菓子などである。 なお、最近の墓地造りの傾向として、樹木が生長して墓石を動かしたり、 草取りが難儀とのことで、墓地にあった樹木を全て伐採したり、墓地内の全てを 磨いた石で覆ったりなどしている。 しかし、我が家の墓地だけは、樹木や雑草が、わんさと生い茂っている。 |
[次へ進む] [バック] [前画面へ戻る] |