GLN「鹿角篤志人脈」:相馬茂夫

山の枯木のつぶやき(3)

 私は、この松の木の作業を見に行っていたとき、土手のさつきやつゝじを見てまた草が伸びてきたナー、 刈らなきゃと思いながらフト思った。こゝを保育園のお山にすればいゝんだ、 上には山神さんを中心にして広場もあると。
 こゝにさつきやつゝじを植えはじめて二十年くらいになる。 この二〜三年前から小さかった苗木もやっといくらか花が見られるようになった。 春になって花が咲いたら、この花の間を自由に動きまわって遊ばせたい。 保育園の前の土手は少し急で距離も短いので危い気もするが、 こゝだと傾斜もなだらかだし、上に上れば走りまわって遊べる広場もある。 刈った草があったら集めて山をつくってもいゝし、散らかしてもいゝ。 ヨイショ、ヨイショと一輪車につんで押して歩いてもいゝ、子供達は有る物を利用して勝手に遊ぶだろう。 たゞ先生一人二人では見守りの目が届かない、そこが手つなぎの出番だ。 みんなで見守ったりして一緒に遊ぶ。保育園の中で子供達のやることを見て、 上手、上手と手をたゝいているより、よっぽどいゝ。 第一自分の健康のためにもいゝ(と勝手な理くつをつけるわけでもないが)。 たゞ残念なことは、この斜面は少し狭い、この倍程は欲しいのだが。
 
 そして、と、こんなことをいゝ出したら、オメエは子供達を働かせる気か、 と怒られかもしれないが、話しはこうだ。 山神さんのさつきやつゝはまだ小さくて雪折れなどから守ってやらなければならない。 雪つりなどとかっこいゝことではなく、グルグル巻きでいゝ、子供達に小さな枝のはしっこを持たせたり、 この縄のはじっこ一寸持っていて、とかそんな程度の手伝いでいゝ、一緒に冬囲いをしたい。 お互いに持つのは、一本の細いワラ縄でもその縄を通してお互いの心が通じ合う。
 
 春になったらその縄を一緒にほどいて、一本でも二本でもいゝ子供達にも持たせながらヨイショ、 ヨイショと上の広場に運び上げる。 花が咲いたらまたその花の間で思いっきり遊ぶ。 子供達の心の中にも自分達が雪から守って上げた花がキレイに咲いたというよろこびがあるだろう。
 
 山神さんの境内には桜の花もいっぱい咲く。この下でも遊ばせたい。 たゞ残念なことに今年はテングス病の関係もあってさっぱりだめだった(山神さんだけではないが)。 四月の初め頃市街地の上田孝造さんが仕事に使う高所作業車を持ってきて病気の枝を切ってくれた。 仕事の関係もあって半分くらいより出来なかったが、秋になって葉が落ちたら、 またやってくれるといっていた。来年はいゝ花が咲くだろうと楽しみにしている。
 この桜の木の間に紫しきぶが二〜三本ある。 秋になるとかわいい小さな紫の実がいっぱいつく。 私はお盆前の草刈りのとき、何んの気なしに刈り払ってから、これはウメモドキだった、 切らなきゃよかったと思った。今この木をふやそうと思っている。 雪が降ってあたりを色どるものが何にもなくなったとき、 このウメモドキの赤い実がひときは美しく見える。
 夏になると、さつきやつゝじの間に山百合の花が咲く。少しずつふえてきた。 秋になると吊りがねにんじんのかわいゝ花がつゝじの木にからまって咲いていたりする。 何んのキノコか知らないが、キノコが顔を出していたりする。 そして落葉、踏みしめて遊んでいるうちに、やがて冬。
 
 山神さんの山は、保育園の山にしたい(保育園とは限らない)。子供達が自由に遊べる山にしたい。 どんぐりのなる木も一〜二本残したい、今、山神さんに向って参道の左側はやぶになっているが、 会社の持分と個人に売った境は私にはよわからないが確かめてみてお願いして、 あそこを切払ってさつきなどももう少し植えたい。今その左奥のさつきがよく咲くようになってきたが、 下からは全然見えないので、さしつかえなかったらお願いして畑の垣根をできるだけ低く切ってもらって、 下からの見通しもよくしたい。そんなことも思っている。
 
 保育園から通学路を通って山神社までは少し遠い。 だが私はこの距離(時間)が大事だと思っている。 この道を手つなぎ(とは限らないが)の人達とオシャベリしながら手をつないで歩く 「手つなぎ街道」にしたいと思っている。今の若いオカーサン達は、 自分が歩いたことも子供を歩かせたこともあんまり無いと思うので、無理だと思うかもしれないが、 子供の足は案外丈夫だ。大きい組さんなら大丈夫歩けると思っている (自分の子供を歩かせた経験から)。

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