GLN「鹿角篤志人脈」:相馬茂夫

山の枯木のつぶやき(2)

○響け大太鼓A
 太鼓をかついで横道に入りすぎてしまったが、 私も子供が小学校に入ってからPTAに関係していた。 軽井沢の子供会では夏休みの行事の一つとして鉱山の全山盆踊り大会に何回か参加した。 八月に入るとこの大太鼓を協和会館の前に持ち出して、 男の中学生は先日亡くなった小山内徳三さんに指導してもらって太鼓締めから打ち方の練習をやり、 女の中学生や小学生は小松保江さん(四年程前に亡くなった)の奥さん達に盆踊りを教えてもらって、 当日は太鼓を先頭にして皆なで参加した。 この太鼓を頑張った中学生達は誰々であったか今は思い出せないが、 今も何人かは尾去沢にいると思う。 その人達に先づこの保存会に入っていたゞいて伝統を受け継ぎ、 伝統を伝えて行く中核となって協力したいたゞきたいものだと思う。 これが関係のないようなことまで長々と書いてきた私の本音というところです。
 
 今年もまた八月になると太鼓締めをやり練習をして十三日には先祖供養の巡行をやると思うが、 今あの太鼓をたゝいているのは八十も半ばという柳舘計一さんや藤田英雄さん達である。 サアーやるぞと元気を出して頑張っているが、正に老骨にムチ打って (といえば本人達におこられるかもしれないが)ふる里の伝統をたやしたくない、 ふる里の伝統を伝えていきたい一心で頑張っている。
 今この保存会の中心的な行事は八月十三日の先祖供養の巡行だが、 会員の老齢化、減少により今は太鼓も一つ、それもリヤカーに乗せて引っぱっている。 以前はなんとか太鼓も二ツ、それも両側からかついで打って、 高張り提灯や巡行の旗もかついで行くことができた。 子供達の提灯を張って参加した。 今は細々と細々となんとかなんとか命脈を保っている。 そんな状況になってしまった。 なんとか昔の姿にもどしたい、尾去沢の伝統行事、伝統文化として。 巡行が終ったら内田さんがいったようにナンコかやきの鍋をかこんで 元気いっぱいの盆踊りもやりたい。 金堀りという言葉のいゝ悪いは別として、タガネ一本に命をかけた山の男達、 金堀りの心意気をよみがえらせたい。 今ふんばらなければ伝統行事も金堀りの文化も消えてゆく。
 
 それで私はこんなことを思っている、それは会長さんにお願いしなければならないことだが、 あの例年観音堂の前でやっている太鼓締めを市民センターの前でやりたい、 雨がふったら講堂にシートでもしいて。 皆さん太鼓の音は聞いていても締めるところを見たことのある人は 程んどいないんじゃないかと思う。 花輪など外の地域の太鼓は私の小指のような細いロープを使っている。 尾去沢は大人の親指より太いような麻縄で三人も四人もかゝって力いっぱい締めてゆく、 最後は棒を当てゝテコの力で締める。 太鼓の皮も外の地区は馬の皮だと思うが尾去沢はより丈夫な牛の皮である。 バチの太さも違う。外の地区のような賑やかさもはなやかなバチさばきもないと思うが 堅い岩盤にタガネ一本、力いっぱいいどんだ人達の力強い響きがある。 太鼓の練習は近所のこともあり観音堂の前になると思うが、先づその第一歩、 太鼓締めを皆さんで見に来ていたゞきたい、 特に中学生の皆さんには体験してみていたゞきたいと思っている。 笛を吹いてみたい人も大歓迎、ブラバンの経験のある人なら簡単に入っていけると思う。 皆なでふる里に誇りを持ち、ふる里の伝統を守り伝えていきたい。
 
 余談になるが、この大太鼓を小中の野球大会とか陸上大会などに出場させられないだろうか、 そんな古くさいものをカッコ悪いと思うか、伝統の大太鼓を力いっぱい打ち鳴らす姿を 美しいと見るかは別として。 小学校は「尾去沢尾去沢わがかなやま」と歌い、 中学校は「かなやまの煙りは高く空をゆく希望のごとし」と歌う。 素朴だけれども力強いこの太鼓の響きにこゝに生きる私達の誇りと心意気をこめて 大空に響かせてみたい。 もしいゝとしても伝統の文化財をそういうことに使うのはうまくない、という考え方もあるかもしれない。 がもともと私達の生活と共に生きてきた太鼓だ、 地域の行事の中に生かしていくということはいゝことだ、 それが伝統を守り伝えて行くことにつながって行くことだと思うのは私の勝手ないゝ分だとは思うが。
 もしダメだとなったら心配するな、 私はいゝのを一つ持っている。それは先にも書いた下タ沢にあった太鼓だ、 大きい方は駄目になったが、小さい方は一枚胴(刳り胴、一本の桂の木をくり抜いた)なので 皮は駄目になったが胴は残っていたので平成十二年下タ沢をやったとき修復した。 しばらく鉱山クラブに預かってもらっていたが今は中央通り自治会館に置いてもらっている。 今下タ沢出身者は尾去沢には畠山定雄さんと私よりいない、 彼がいゝといえば問題ない、ということで無料出陣を待っている。 (外見は大きい太鼓とそう変りない)

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