下タ沢会によせて(覚書)

附1 閉山こぼれ話し

 先日物置においた古い茶タンス?を処分しようと引っぱり出した。これは七十年 近く前、親父が花輪で作ってもらい、坑内を通って下タ沢まで背負ってきてくれた 物であった。3尺×3尺くらいで、上下に引出しがあり、中が二段になっていた。私 の本箱にでもせいということであった。ガラスはこわれ塗りはすっかりはげて、引 越の度に格が下ってついに物置住いとなっていた。が、親父の形見みたいなものだ から、となんとなく捨てないでいたが、いよいよ処分するかと引出しを抜いたら、 奥の方に茶色になった紙がおしこめられていた。なんだろうと思って引っぱり出 したら、昭和三十九年五月の文化祭の映画予定表と購買会の行事予定表であった。

 昭和三十九年といえば、尾去沢鉱山が下りに向う境目の年であった。ご存知のよ うにこの年製錬縮少問題が起ている。以来合理化、縮少をくりかえして、遂には閉山 となった。
 この予定表を見ても、私には俳優さんの名前は何人かわかるものゝ、映画の内容 となると全々わからない。この映画の中になつかしい青春時代の思い出の広がる人 もいるのではないだろうか。
 そしてこの年、●六月十六日、新潟大地震 M七・五 ●九月二十三日、巨人軍の王 貞治選手が年間本塁打五十五本の年間新記録樹立、●十月一日、東海道新幹線開業、 東京−大阪「ひかり」四時間、●十月十日、東京オリンピック開幕、
●そして尾去沢鉱山は、
従業員 二、四〇八名、閉山時 二三一名
世帯数 二、三六〇戸、閉山時 一、四〇三戸、現在 一、三九九戸
人口 一〇、八二四人、閉山時 四、七九五人、現在 三、八七五人
小学生 一、二五三人、閉山時 四三二人、 現在 二二一人

○39/5月分映画予定表(尾去沢鉱業所文化会)(抜粋)
黒い牡牛・美しき北海道
丘は花ざかり
泥だらけの純情
ピーターパン・青きドナウ
ロイドの人気者
太平洋ひとりぼつち
魚雷艇109
座頭市喧嘩旅・冷血鬼の激突
赤い靴とろくでなし
続男の紋章
学園広場
光る海
悪名一帯
 
○5月15日午後1時・6時開演 \30
青春歌謡民謡ショウ
楽団オスカーアンサンブル

 尾去沢はまだまだ元気でした。
 今年もよろしくお願いします。
 尾去沢の皆さんへ

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