下タ沢会によせて(覚書)

附1 閉山こぼれ話し

 坑口閉鎖式
 
 五月三十日の朝八時半頃、採鉱の山田課長から電話がきた。今こゝで係員達と話 しをしていたんだが、明日午前中現場に行って最後の見届けをして、午後からクラ ブのお別れ会ということでは、何にか心の整理がつかない、これで終りなんだとい うふん切りがつかない、何にか行事を考えられないか、という話しになったという。 とっさに私の頭に浮かんだのは、坑口閉鎖式という言葉、みんなでこれで終りだと いう坑口閉鎖式をやりましょう、といってはみたものゝ、私には何んの権限もない ので、早速高杉課長に今、山田課長からこんな電話がありましたと話したところ、 すぐ上の方に話しをして準備するようにということになった。となれば話しは早い、早速軽 井沢詰所にいた畠山忠雄さんに例のように坑口に祭だんをつくるようにお願いし、 海沼神官さんにも来てもらうようにお願いした。そのときの様子は、テレビ等で放映 になったので、皆さんご存知のとおりですが、それは一二七〇年続いてきたこの鉱 山に対する私達の感謝の思いをこめた最後のお別れの儀式であった。

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