下タ沢会によせて(覚書)

澤出家の没落

 さてこれにつづいて「沢出家の没落」というのを書いている。
 「私の少年時代、叔母より聞いた話しだが、沢出家六代目頃の事であると思われ るが、同家の御姫様が家の前に居たら、虻が兜をかぶって来たという、そこで、御 姫様はキセルで虻の頭をたゝいたら、其の兜を置いて、虻が逃げて行った、と言ふ 話しでしたが、そういう虻を見ると其の人の代迄は非常に繁栄し、栄華に暮す事が 出来るが、後は貧乏すると言ふ言伝へだと、聞かされたが、其後私の叔父が其処の 家に婿に行ったが、明治の変革期に徳川幕府亡び、土地並びに鉱山は政府直轄とな り、後、三菱の経営する処となり、沢出家は、没落して、其子孫は東京、静岡等に 行き、当時の記録は重要書類と共にカバンに納め、私方に預けてありましたが、前 記の次第で、此の一文が翻訳され、発表される事になったわけであります。」
 
 ということですが、この寺岡さんが預かったという重要書類と、元山の火事のと き沢出政志さんがお父さんに背負わされた、という書類とどんな関係があるのか、 また寺岡さんが預かったという書類は、寺岡さんが能代に移った後、なくなったと か、わからなくなったとか聞いたような気もするが、それはあくまで風聞に属する ことで、真偽の程は知らない。
 
 ともあれ私は、最初にこれを読んだとき、「アブ」ではなく「ヘビ」と読んで いた。今よくよく見直してみると、蛇ではなく虻だ。いくらなんでも寺岡さんが蛇 と虻を間違えることはないと思うが。私に蛇の先入観があった、それは私達の家で も竜神さんを拝んでいたが、トヨ子さんの家の後ろの畑の方(上の段の向って左側) の山際に小さい社(祠)のようなものがあって、竜神さんだといわれていたような 記憶がある。そのせいかどうかは別として。アブがカブトをかぶって出てくる(ア ブだと飛んでくる)よりも、ヘビがカブトをかぶってニョロニョロと出てくる方が かっこいいというか、様になると思った。もしかして誤植かもしれないと思ったが、 正誤表にはなかった。

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