また牛の背中にもどるが、一頭の牛には二箇積んだという。一箇13貫として26貫
背負っていることになる。こゝに盲点があった。私は実際に牛の背中に積んだ銅は
見たことはない。それで一箇=1ケ、13貫目と思い込んでいたが、「こおり」という
のは、1ケでなくて必ず複数のこをいう、と思った。となれば、一箇は2ケであった
かもしれない。そこで荷造りするときの腕が問われる。荷がゆるんで途中で1枚抜け
落ちても、天上みてのんびり唄を唄っていたか、何頭かを連れて山道などで必死に
なってケツをたゝいていた牛方が、気がつかないかもしれない。となれば、抜銅は
抜け落ちた銅で、これも一件落着となる。 それにしても、1箇12貫350匁強めにということは、1枚6貫目一寸ということにな る。目方をどうして調節したろうか。少し縁を削ったり足したりしたろうか。最後 の製品となるときは、溶けた銅を一定の型に流し込んでつくったと思うが、麓さん の本には、製錬の工程はくわく書いているが、そこのところがない。 |