下タ沢会によせて(覚書)

坑内の明り

○荏(じん・え、えごま):しその一種で、実から油を採る(大字源)。
○えごま(荏胡麻):シソ科シソ属の1年草。インド・中国原産の油料作物。高さ約 1米、茎は四角、葉・茎は浅緑色、葉は一種の臭気がある。花は白色、果実は小さく、 炒ってごまの代用、また荏油(えのあぶら)を採る(広辞苑)。

○桐油:@アブラギリの種子を圧搾して得る乾性油。絶縁用、油紙用、灯用、駆虫 用などとするが食用には不可。きりあぶら。A桐油紙の略。桐油合羽の略。
○桐油合羽:桐油紙で製した合羽(かっぱ)。多く人足や小者などが用いる。
○桐油紙:桐油をひいた紙、もと美濃紙を用いたが、現時は多く洋紙に荏油をひい て製する。よく湿気、雨などを防ぐので桐油合羽・包み紙に用いる。合羽紙(広辞 苑)。

 アブラガミ(油紙)といっても今の若い人達は知らないだろうが、私達はぬれた ものを包むときなどよく使った。今ではビニールやナイロンなど出てきたので、見 ることもなくなったが、要するに「桐油または荏油をひいたコウゾ製の和紙、防水 を目的とする荷造用または医療用。桐油紙。」
 またロウガミ(蝋紙)というのがあった。広辞苑によると、@色が蝋に似ている 紙。A蝋などをしみ込ませた紙。防湿用または装飾用。とある。尾去沢では火薬を くるんでくるのによく使われていた。ロウがぬられており、よく火がつくので、坑 内に働いている人からもらって、焚きつけに使った。杉の葉より良かった。話しが また横道にそれてきたが、ついでに、

 美濃紙:美濃国(岐阜県)から産出する楮(こうぞ)製和紙の総称。紙質は強く、 文書の写し、書状の包、障子紙などに適する。判は半紙より大。という次第だが、 私達は美濃判といった。窓ガラスに美濃判のガラス。書類をとじる時の表紙に美濃 判の表紙というものがあった。今のA3判と同じくらいの大きさ。西洋紙に対して私 達は日本紙といった。

○煙滞(けたえ):佐渡金銀山史の鉱山用語では「気絶(けたえ)として、坑内の 通気が不良で、燈火がともらず、稼働者がたおれたりすること。とあるが、同じこ とか。
○また「油煙にて、人以ての外(ほか)よはりしなり」ということは、今でいえば 「けい肺」になるということか。そして、

○「扣竹の燈らぬ鋪へは、油火も蝋燭もともらぬ物なり」ということは、その坑道 は酸欠状態になっているということか。尾去沢では昭和26年からカンテラをキャッ プランプに切りかえたが、旧坑などの酸欠状態を点検するときなどは、ローソクや カンテラを使っていた(酸素がなくなると火がつかない。消える。)。小鳥のカナ リアを使う(酸欠に非常に弱いという)こともある、というが日常的には使ってい なかった。普通空気中の酸素は約21%とかいわれているが、致死量(何%か忘れた) のところに首を突込むと瞬時にして死んでしまう。だから行きどまりの横穴とか、 深い井戸などに入るときは、空気の流通がなくなって酸欠状態になっていることが 多いから、充分気をつけなければならない、と社会科の勉強みたいになってしまっ たが。

○松蝋燭:「松脂(まつやに)を棒状にしたもの」というが、松の木の傷跡やコブ になっている所などには、ヤニがいっぱい出ていたものだが、それを取ってきて棒 状(どれくらいの大きさかわからないが)にするとしたら、どれだけの量がいるだ ろうか。まして一山の明りに使うほど取るとしたら莫大な量が必要だったのではな いか。それとも何にか松の木からヤニを取る方法があったろうか。とにかく分から ない。

[次へ進む]  [バック]  [前画面へ戻る]