下タ沢会によせて(覚書)

リンゴの唄

 紅玉は今はほんの少しより作られいないようだが、料理(焼きリンゴなど)など に使われるので、命脈を保っているようだが、国光は作る人はいなくなったようだ。  私達は、戦前(といっても私は、昭和18年からいなかったわけだが)から知って いるリンゴといえば、今言った満紅と雪の下だけだったように思う。戦後シベリア から帰ってきた頃(昭23/12)、「リンゴの唄」がはやっていたが、おの紅いリンゴ というのは、やはり紅玉だったろうと思う。
 あのマンコの一寸すっばい味は、私達年代のものにとっては、これぞ本当のリン ゴの味と、なにか郷愁をさそう味である。

 私達が、量は青森に及ばないが、味は日本一と自慢する鹿角リンゴは、いつ頃か ら栽培されていただろうか。そもそもリンゴの生れは、どこだろうか?と事典(少 し古いが)を見てみたら、
「リンゴ、バラ科リンゴ属、栽培品種の原産地はカフカズの北部といわれ、この原 種らしいものが今日でも野生している。(広辞苑によると、バラ科の落葉高木、中 央アジア原産、北半球温帯、冷帯の代表的な果樹、とある。)これがヨーロッパ各 地で改良され、今日のヨーロッパ品種ができたが、さらにこれらは移民によって北 アメリカに導入され、今日の合衆国の品種ができたものである。一方中国には古く から別種があり、日本にも導入されて<林檎>と書かれているが、洋種リンゴが入 ってからは、ジリンゴ、ワリンゴと呼ばれ、輸入リンゴはオオリンゴ、セイヨウリ ンゴといわれていた。現在ワリンゴはなくなったので、リンゴといえばセイヨウリ ンゴをさすこととなった。最初に日本にリンゴが入ったのは、文久年間(1861〜 1864)であるが、本格的導入は1872年(明治5年)以後である。今日世界中で命名 された品種は約2000といわれ、日本に入ったものも500種あるが、現在栽培されて いるものは10種を出ず、合衆国でも20種あまりにすぎない。

 現在日本での主要品種は次のとおりである。として、 @紅魁・黄魁、A祝・中成子、B旭、C紅玉、原名はジョナサン、合衆国でも主要品 種。日本でも本種が出まわるようになって初めてリンゴらしいリンゴを味わうこと できるようなった。Dデリシャス(スターキング・リチャードはこの系統)、Eゴー ルデンデリシャス、F国光、原名はラルス・ジャネット、アメリカではすでに過去の 品種、Gインド、最晩生種、芳香があり、貯蔵力に飛んでいる。甘味が強く、酸味 のない特殊品種で、リンゴの品種としては邪道のものと考えられ、これ以上伸びる ことはないとみられている。特有の形及び色からインド産のものと考えている人も あるが、これは日本独特のもので、外国にはない(広辞苑には、北米インディアナ 州の品種をもとにわが国で育種、とあった)、H最近育成された新品種、内外で多 数発表されているが、これらの価値が正しく判断され、主要品種になるには今後相 当の年月を要するであろう。」
(「平凡社、世界大百科事典 昭和42年(1967)刊」より、この本から30余年、リン ゴの世界も大分変ってきているだろう。)

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