下タ沢会によせて(覚書)

下タ沢にもどる前に − 杉の大木・カモシカ・熊 −

 ということで、下タ沢の話しにもどって行こうと思ったが、仁鮒の山子の話しで 思い出したが、二ツ井町の仁鮒水沢スギ植物群落保護林内に日本一背高ノッポの天 然秋田杉「キミマチスギ」(きみまち坂にちなんで名命したものだろう)、樹高58 メートルがあるという(県民手帳資料編)が、背が高いだけでは名木とはいえない のか、日本の巨樹巨木647本を集めた本の中には入っていない。秋田県の代表は13本 入っているが、その中に「日本一のブナ」というのがある。いつか新聞に和賀山塊 で発見という記事があったように思うが、和賀山塊といわれるとなんとなく岩手県 (秋田県よりに和賀郡がある)のことのような気がしていたが、それは角館町の山 奥のことだった。それはそれとして、杉の木は3本のっているが、その中の1本は 大湯の大円寺の門杉(樹高40メートル、幹周り9メートル、推定樹齢2,000年、県指 定天然記念物)がある。門杉(もんすぎ)というから、門のように2本あったとい うが、江戸時代大洪水により1本流されたという。

 尾去沢ではこうした杉の大木は見ることがなくなった。下タ沢の杉も切られてし まったし。が、カモシカはふえてきた。五十枚や水晶山、里近くにも最近くるよう だ。昨年であったか松子沢ダムに行く道路脇の林の中にチョコンと立っているのを 見た。カモシカなら可愛ですむが、問題は熊だ。熊といえば、大葛の山奥のことぐ らいに思っていたが、近年は尾去沢にも出る。水晶山に出たとか、十文字で見たと かいう話もあるが、一昨年であったか、大館にいる宏明が下タ沢で会った(見た) といっていた。わがふる里などと、ウカウカと行けなくなった。

 今年は特に熊の被害が多かったようで、熊の方も大分とられたようだ。新聞など に何十キロの熊とかよく出るが、実物を見たことがないので、見当がつかない。熊 牧場などに行っても、私は何十キロと背中に書いているわけでもないし、というこ とで先にも書いた野添憲治という人の「マタギを生業とした人たち」(平成元年刊) という本を見たら、阿仁の打当(うっとう)の最後のシカリといわれる鈴木松治さ んという人との対話の中で鈴木さんが、今は普通の熊は80キロぐらいだといってい る。そして、これは少し大きいといえば120キロから130キロ、昔は130キロくらいの 熊は、たまにはとれたものだが、いまは100キロ以上の熊がとれるってことはそうな くなった。みんな小さくなって、80キロの熊を獲ればいいほうだ。それじゃ熊はだ んだん小型化しているわけですが、というのに、そうなんだ、どうして、というの に、年とった熊がいなくなったということだスな、といっている。昔は大きいのお った、といって若い頃200キロ以上の熊を2回獲ったことがあるという(話をしたと きは68才)。

 これで私も、有害駆除などで何キロの熊をとったという話をきいても、大きいの か小さいのかと首をひねらなくてもよくなった。80キロときいたら普通だな、100キ ロときいたら大物をとったな、と。この本が出てから12〜3年になるが、状況はあま り変っていないと思う。

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