下タ沢会によせて(覚書)

山の神さま − 山子(やまご)のはなし −

 さて、話しは、シトギ餅から八甲田の遭難へ行き、おでしこになってしまったが、 実は私達に関係ない訳でもない遭難に、八甲田ならぬ岩木山に於ける大館の高校生 の遭難があった。記憶している人もあると思うが、それは昭和39年(1964年、東京 オリンピックのあった年)1月4日、岩木山に登った6人のうち1人が頂上に行かない で残り、登った5人のうち4人が死亡した。この4人の中に、大舘に行った相馬正男 のカーサン(与七郎の妻)の甥が含まれていた。正男のトーサンもカーサンも連日 の捜索で心配し難儀したと思う。雪山での遭難なんて私達には関係ないようだが、 どこかでつながりがあると思った。1月4日、旧でいえばまだ12月、でしこ吹雪の吹 く頃だったろうか。

 この遭難事件は、ノンフィクションドラマ「遭難」として秋田の方では、3月に放 映になったが、この映画はプロの役者はいなくて、現在の鳳鳴高校の生徒や地元劇 団員などが出演しているという。8月20日夜8時からと9時15分からの2部構成として HNKから放映されたので見た人も多いと思う。

 今、中高年の登山ブームとかで登山が盛んだが、それだけ遭難者が後を絶たない。 彼等はシトギ餅を上げて山の神さまを拝んだことのない連中だろう。
 自然に対する感謝と畏れ、その教えてくれるものをないがしろにしてはならない。 近代文明という思い上がりの上に立って行動を起せば、必ずそのむくいがくる。昔 の人達は、といっても私達もその年代に入りかけているわけですが、山に入るとき は、木を切るにも狩をするにも、必ず山の神様を拝んで、その加護を祈った。その 謙虚な感謝の心を忘れてはならない。
 ……

 山の神さまといっても、鉱山を守る神さまは別として、大きくわければ、木を切 ったり運んだりする、いわゆる山子といわれる人達の神さまと、山へ行って狩をす るマタギといわれる人達の神さまとにわけることができるかもしれない。その祭神 は個々には少し違うかもしれないが、鉱山をはじめ大山祇紙など共通しているもの が多いのではないだろうか。といっても、これは少し違う話しの受け売りをする。

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