△作沢沼と浮島景観 作沢沼の全体景観を東岸から展望した。この山域は30年程前まではブナの 巨木林に覆われ、林床も美しく、見通しが利く素晴らしい大森林であったという。 その巨木のブナ林が沼を囲み、神秘的静寂により、ここを訪れた人は等しく感動を 覚えたとされている。現在は沼畔に細く帯状にブナ帯が残されているが、周囲は 杉林となり、森林景観が調和を欠いたものとなっている。 浮島は、中央が大浮島で右側が小浮島、左が中浮島であり、この浮島のある範囲は、 水深0.7〜1m程度で、着底はしていない。 △鏡面の水に深い色を映す作沢沼の北岸の森 手前の浮島は最も小さい規模のものであるが、それでも長さは10mで幅は3m程度はある。 浮島の厚さは泥炭層で0.7m程度で、その上に0.3m前後のヌマガヤが密生して、浮島の姿を 作り出している。そのヌマガヤの根元にはミズゴケ・モウセンゴケが分布する。 島の草群の中で背丈の高いものはカヤツリグサか、ミズギボウシ・サワギキョウなどである。 対岸の水際の低い植物帯はミツガシワで、その背後の丈の高い植物帯はアシ原である。 アシ原とブナ帯の間には、イヌツゲ・ヤナギ・ノリウツギ・オオカメノキ・カエデ・ マンサク・ホツツジ・ヤマツツジ・ナナカマド・ハシバミなどの低木帯があって、ブナ帯に 移行するとブナ・ナラ・ホオノキ・ハンノキ・サワグルミとなり、林床にはチシマザサのある 部分と、それが欠落している部分がある。杉は30年木程度の植林によるものと、 作沢(白沢)神社の神木としてのものがあるが、その神木もそれ程古く植栽 されたものではないと判断される。植林した杉群が30年木だとすれば、作沢(白沢)神社 の御神木は最も長く見積もっても100年程度を経て現在の高木になって いるのではないかと判断される。 この一帯がブナの巨木に覆われていた時代の残照の様な森は、作沢沼の南岸に幅 40〜60m程度の帯状に認められるが、その背後は標高960m程度の一方高山の稜線までが、 杉の人工林となっている。 |