鹿友会誌(抄)
「第二冊」
 
△先輩紀伝
○伊藤惣兵衛氏
 名は為憲、喜三右衛門の二男なり、少うして鋭敏、人皆、神童を以て目し、長して学に 志し、郷に師友なし、脱走して江戸に入り、糊口の為すへきなし、即ち徳川旗下の臣、 花房氏に仕ふ、又鵜殿氏に仕、亦志を得す、又竹本氏に仕へ、兼て童児師となり、資を 得て、勉学怠らず、
 竹本氏長崎奉行に転するに及ひ、惣兵衛、其公用人に挙けられ、扈従して長崎に至る、
 当時、幕臣の長崎に奉行たるもの、皆暴富とならさるなし、惣兵衛、其公用人たり、亦頗る富む
 
 晩年鹿角記を著はし、郡中の名勝旧跡、山川の脈絡形勢収めて漏さす、郷人の古事来 歴を探らんと欲する者、今に至るまで一に此書に依り、皆之を称揚して、惣兵衛君の賜 とす

[次へ進む]  [バック]  [前画面へ戻る]