鹿友会誌(抄)
「第四十一冊」
 
△思ひ出の記事
○私の幹事長時代の思ひ出   小泉榮三
 昭和三年から仝七年までの五ケ年間、会誌で申せば第三十一冊から第三十五冊までの 五冊が、私の幹事としての会の仕事に、深き関係を持った当時の総べてが記録されて 居る次第で、右を今思ひ出のまゝ纏めて見ますならば。
 
 川村顧問の台湾総督親任祝賀会、昭和三年六月二十二日、於三共ビル内エンプレス、 出席者四十八名。此種大先輩の祝賀会には極めて出席者多く、幹事は常に心配なく開催の 手順を定め得らるゝのであります。
 
 内藤湖南、大里武八郎、両先輩の帰省展墓の期を捉へて夏期例会、八月八日、於毛馬内 仁叟寺、出席者五十六名。
 当日午後一時半毛馬内小学校に於て、大里武八郎氏の「陪審制度に関して」、内藤博士 の「鹿角を中心とせる世に隠れたる功労者」の題下に有益なる講演あり、聴講者は本会員の 外、毛馬内町の有志約三百人、多大の感動を与へた事でありました。
 
 警保局長横山助成氏の物を聴く茶話会、十二月九日、於警保局長官舎、出席者四十四名。
 本会振興策の一つとして郷里関係の知名士に接し、会員の見聞を広める意味に於て、大館 出身の同氏に対し、小田島信一郎さんを通じて御願致したる処、快く承諾を得、局長官舎 に於て茶話会の催ほしをなし得た事は、感謝に堪えぬ次第でありました。
 
 石井忠吉氏の南米開墾に関する講演を、第四十三回総会の席上に聴く。昭和四年六月二十八日、 於朝日新聞社内、出席者二十九名。
 総会並びに例会等の会合に際し、名士知己の講演を差し加へる試みとして、大中一期卒業生 の石井商務官は、北秋十二所出身者として、今度創立の日亜拓殖株式会社専務取締役たる人で、 南米アルゼンチン棉作開墾事業に関する専門的見地より、現時の実情を披瀝せられ、邦人発展の 好機なる所以を論断し、多大の感激を与へたのであります。
 
 石川漣平顧問、陸軍中将に御昇進祝賀会、十月九日、於電気クラブ、晩餐後秋田県出身優生 運動の先駆者として知られる池田林儀氏の「独逸をめぐる魂」と云ふ演題下に、現在独逸国情に 関する興味深き講演がありました。

[次へ進んで下さい]