鹿友会誌(抄)
「第四十一冊」
 
△巻頭言「鹿友会精神 川村秀文」
 我々日本人の特質たる忠君の思想は実に孝養の精神に発し、愛国の思想は亦実に愛郷の 精神に胚胎することは、今更言ふまでもないことである。
 
 今我が鹿友会の創立されたる動機を温ぬるに、明治二十四年四月発行の会誌創刊号の冒頭に、 「在京学生申合せ、互に親睦を厚うし、学業を切磋し、過失を規戒して、在郷父兄の希望を 全うと、兼て追々子弟遊学の路を誘開せんとの趣旨にて、明治廿年九月以来鹿友会を組織居り 候処云々」とあり、又同会誌に正員大里文五郎記、鹿友会沿革の題下に、「抑々我鹿友会 の創立せられしは、明治廿年九月にして、爾来、会を塁ぬる事十数次、星霜を閲する事五歳に 渉り、会運日に月に隆盛の域に進み、未だ以て本会が当初希望せし処に満足せしむるに至る 能はずと雖も、之を従来の成績に照し、会員の親睦知識交換過失相規し、患難相救ふの点に於て、 本会の与て大に力あるは余の信じて疑はざる所なり云々」とあり、これ即ち、孝養精神、 愛郷精神の現れにあらずして、何であらう。此の諸先輩の樹立せられたる本会創立の精神こそ、 実に我が建国の精神に合致し、皇国の最も美風とするところである。これ鹿友会精神の真髄 である。
 
 我が日本帝国の駸々乎として延び行くところ、我が鹿友会も亦之に随伴して発展して行く であらうことは、吾等の信じて疑はざるところである。
 時局下に於て、本会五十周年を迎ふるの当り、吾等は益々団結を固くして、親睦を厚うし、 以て弥々本会の伝統的精神を発揚すべきである。

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