鹿友会誌(抄)
「第二十三冊」
 
△亡友追悼録
○和井内貞行翁
 頃日来、気色勝れず、病床に在りし和井内貞行翁、五月十六日、遂に溘焉として逝か る。思へば、明治十七年、一身の運命を十和田湖養魚のことに賭し、神霊を汚すの俗説 迫害を恐れず、失敗に失敗を重ね、産を傾け、貧困窮迫と悪戦し、遂に明治三十六年、 北海道支笏湖より持ち来りし、姫鱒の児三万を放流して、勝利の栄光を得る迄、翁の百 折撓まぬ鉄石心は、まことに敬服に堪へざる処なり。閲歴、追憶等を次号にゆづり、今 僅にその逝去を告げて、哀悼の微衷を表す。

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