鹿友会誌(抄)
「第二十二冊」
 
△亡友追悼録
○村山福太郎君
 君は小坂町の人、小坂小学校を卒へ、大館中学校に学ばるゝや、夙に秀才の誉高し。大 正三年優等の成績を以て、大館中学を卒業し、同年九月遠く満洲の旧都奉天なる南満洲 医学堂に入学し、杏林の道を探ること数年、業成り故山錦を飾るの時、朔風の君が健康 に適せざりしにや、不幸病を得て、其道を行ふことを得ず、悠々として故山に加養せら るゝと雖も、年を越えて病尚ほ癒えず。親戚、故旧、神かけて君が恢復を祈りしかども 、遂に芳魂空しく天に帰して亦来らざるを如何せん。君未だ年歯漸く二十六、前途多望 の身を以て現世を去りぬるも、亦人の世の運命なるべきか、吾等の心痛み堪へざるもの あり。噫!

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