鹿友会誌(抄)
「第二十二冊」
 
△亡友追悼録
○戸川鑛郎君
 本会賛成員戸川省次郎氏の嗣子にして、幼時小坂に学ばれしが、後、一家を挙げて東 京に移らるゝに従ひ、慶応義塾に修学せらる。天稟顛悟、人と語りて城壁を設けず。真 に一個の偉丈夫たり。学成り、三千里の天地、男児将に覇業をなさんとするに当り、天 か、命か二豎の冒す所となり、一朝にして白玉楼中の人となりぬ。悲しい哉。先に愛弟 修二君の夭折せらるゝに遇ひ、今亦君亡し。悼しからずや。

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