鹿友会誌(抄)
「第二十二冊」
 
△亡友追悼録「小田島由義翁」
○小田島雲樓翁の面影
一六、清廉潔白なりしこと
 翁は、屡々郷党の為に押されて諸種の運動に上京さるゝことありしが、従来運動を名 として贅費を強請するものあらんことを慮られ、其運動費は最小限に切り縮めて其範を 作らしめたり。総べて清廉潔白は、翁の特色の一として数ふべく、永き役人生活の間も 、夫等の点の非難を招かれし事なく、後年町長時代には多少窮境に居られしに拘らず、 薪炭其他廉売品などを分つ時は、所員を先きにして、自己の分を後にせられたりと聞き ぬ。
 
一七、風流韻文のこと
 翁の嗜好は飲酒の外、格別道楽といふ程のことなかりしが、一時大弓に熱中されしこ とありしも、老後を雲樓と号し、専ら俳諧を嗜まれたり。忌憚なく云へば月並を出でず 。兎角理屈多くして、其技倆遠く、令閨なる初女の下にありといふ定評なりしも、研究 好きの翁は、盛に古俳書を渉猟し、句数に於ては何人にも遜色なかりき。

[次へ進んで下さい]