鹿友会誌(抄)
「第十六冊」
 
△川村左學翁霊前祭「祭文」
……
 歳癸丑にあり、秋十月十九日、在京鹿友会員一同、会の先覚者、故の川村左學翁の霊 を祭る、抑も翁の会に於けるや、宛然として家に耆老あるが如く、曰はされとも威あり 、為さされとも重みあり、伏して本会翁あるを偲べば、常に霊化せらるゝ所多く、尚( 人偏+尚)し会誌に其錦心繍腸を吐露せられば、咳睡珠を成し囈語も韻に諧ふ趣きあり き、其和漢の学に於いて、花輪町独翁を唯一人とせり、翁の館を損てるや、花輪町の学 燈滅し、茲に諸子百家の学泯びたり、故に吾人常に翁の寿を祈るや切なりき、今や溘亡 を聞く、哀悼何んぞ勝へん、夫れ翁は文学の士なり、後進の諸を祭る礼に於いて其道あ り、故に敢て清酌庶羞の奠を用ひて、文を用て之れを祭る、霊髣髴として来り享けよ。
……

[次へ進む]  [バック]  [前画面へ戻る]