GLN「鹿角の温故知新への旅・鹿角先人列伝一覧」

松井太禅

 昭和54年鹿角市文化功労者。

参考(出典):「鹿角のあゆみ」
 
△鹿角のあゆみ 序
     鹿角郡地方教育委員会連合会長 松井太禅
 
 「郷土学習」は日本社会の歴史及び地理研究の一環としてばかりで無く、郷土に起った歴史的事象を本にして、 社会全体との関連性、現象の来由、因果関係を把握した上で郷土の課題を導き出すものであって義務教育課程中、 社会科学習の領域においてきわめて重要な部位を占めるものである。
 
 勿論、郷土を(鹿角を)其の歴史の流れの上に立って、社会学的に捉え、人文的に探求し、先人の生活意識や環境に対する 調和性、地域を基盤とした創造性、課題に対する体験等を分類考証する事も必要であると思うが 余りにも広汎多岐に渉る事は言を候たない。
 
 此の様な郷土史の位置づけと学習の効果性を追究する場合に、先輩諸先生の物した「鹿角誌」「町史」の貴重な文献を 横糸として鹿角社会の変遷推移を年代順に記述し、多面必然の中にある文化史的特殊性をも瞥見する事を要求されるのが 郷土学習であると思う。
 
 幸なことに鹿角郡に於ては逸早く社会科新指導要領の目標具現の為、郡下各学校の担任及び有志の諸先生が相会し、 佐藤政治先生を会長とする「鹿角郡社会科研究会」が結成され昭和卅四年以降、凡ゆる障害を克服され熱誠以て編集に当り、 翌昭和卅五年には「鹿角郷土年表」を発表、昭和卅七年三月「鹿角の社会科歴史資料編1」を発刊したのである。
 茲に第一次目標を達成し、次いで「地理編」の刊行を企画したのであるが予定を変更し昭和卅九年八月、 続編「鹿角の歴史、明治、大正、昭和編」の刊行を見たのである。
 
 一と度、発刊の報を知るや郡内外から好評を以て迎えられ、引き続き希望申込みが跡を絶たぬ現状に鑑み、今回前記 T・U編に増補追録し合綴一本とし新たに「鹿角のあゆみ」として発刊を見るに到った事は誠に時宜を得たものとし、 且つは鹿角郡教育史上尊い労作として感激に堪えない。
 
 本書の出版は待望久しかったものだけに単に中、小学校社会科学習の副読本に位置するに止まらず、此の書が機軸となり 秘蔵されて居る資料が展示され、個々の研究、グループの研究が促進されて鹿角が辿った歴史的事実、 文化現象が各分野に於て一層深められ正確な考証の下に綜合的に大成される事を期待して止まない。
 
 最後に、本書を纏め上げる為、資料の蒐集整理、考証、編輯に当たられた研究会々員諸先生の御苦労に 心から感謝と敬意を捧げます。
  昭和四十四年六月廿五日
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△鹿角のあゆみ  序文

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