△ゼンマイ織り 出羽(山形・秋田)では、古くから「ゼンマイ織り」が織られていた。 経糸(たていと)には絹糸(ときには木綿糸)、緯糸(よこいと)には真綿とゼンマイの 綿毛で紡いだ糸を用いる。 まず春に採ったゼンマイの綿毛を天日で干し、夏になったら約九〇度で蒸して乾燥させる。 乾燥させたゼンマイの綿毛と真綿とをほどよく混ぜて綿状にする。また必要によって、 これに水鳥(白鳥など)の羽毛を混ぜることもある。 この綿状のものを糸車を用いて糸に紡いで緯糸とする。 このゼンマイ織りは、防虫、防水、保温などに優れているという。 必要により草木染を施すこともある。 「天鷺ぜんまい織り」 <考察> @ 出羽(羽州のこと、秋田・山形)の呼称の起こりは、古来この地方は、鳥の羽(ハクチョウなど の水鳥やツルなど)の産地であったからとされている。都の人々は、鳥の羽を防寒衣(間着) として重用していたのであった。 A 大昔は秋田の一部であった鹿角は、「けふの細布」の特産地として知られていた。 「けふの細布」は、錦木塚伝説の政子姫が鳥の羽で織ったものであった。 B 織物の原料は、鳥の羽(羽毛)のほか、野兎の毛も用いられるようになった。 C 時が下ると、一般庶民の衣服として、ゼンマイの綿毛も用いられるようになった。 D 更に時が新しくなると、「サキ織り」が織られるようになった。 E 以上の織物はいずれも(羽毛も、野兎の毛も、ゼンマイの綿毛も……)、 緯糸(よこいと)として用いられている。 |