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[鹿角の演芸・民俗芸能]

 
川原大神楽「川原万歳」
 
△前文その四
 
 太夫 とうくんのせいとう、我また天下にあまねく武士は、光栄をたな心として、弓 は袋に収まりて、太刀は鞘を出でずして、とささのみよとかやかほどめでたき折からに、 ごさいの才三一曲囃してまいろ。
 
 才三 オウー、オウトセー武士は巧名、世は情け、オランダ、南京我が京まで響き渡 ったこの才三。太夫様の御用とあらば、取るものも取りあえず、食うものも食いあわせ ず、ちょうどお前の前に、ブラリ、ヤラリとお目玉にぶら下がってそうろう。
 
 太夫 それは、お前の前にかしこまってそうろう。
 
 才三 なるほど、お前の前にかしこまってそうろう。
 
 太夫 こら才三、常のそそうと違うてねんも早かった。
 
 才三 そうそらそうもございましょう。
 
 太夫 その方を呼び出したるはべつげいにあらず、ご当所は御祭礼につき、当家万歳 お好みとあり、万歳に通りては、八ツ力、神力、ごもん力、ちょうと上り下りやろうな いしというて、表六番、裏六番、合わせて十二番の万歳何万歳がよかろうかナ。
 
 才三 神力万歳でもよかろう。
 
 太夫 なるほど、神力とは、神の力と書く文字なり。この万歳をするならばとうぴ天 狗は道筋、七福神は中の口よりザンザンめかして舞込む。何事も太夫の従いにつけヨ。 さればもう始めます。徳和歌後トコワカゴ万載ー。
 
 才三 おおきに、ご苦労さんでがんす。
 
 太夫 何として。
 
 才三 それぁまた、何だけナ。
 
 太夫 これは、たいせつてんのうだしというものだ。
 
 才三 きたない、きたないてんのうだしでがんしナ。今時だば夏のクソトビ羽ひろげ だようにして、徳和歌後万載、こんたらきたない、てんのうだしあるもんでねぇがんし ナ。
 
 太夫 では、その方は結構なてんのうだしを知っているかナ。
 
 才三 ヤァー、知ってるとも、知ってるとも。ひとつ、やってお目にかけましょうか ナ。
 
 太夫 それぁ、ありがたいナ、
 
 才三 まずなし、当コクボウさんにおいは、鶴太夫に亀太夫、ナットキエボウシをい ただいて。
 
 太夫 それは、ナットウエボウシをいただいてというものだナ。
 
 才三 なるほど、ナットウエボウシをいただいて、ミソごがへシャンと腰をかけ。
 
 太夫 それは、ショウギへシャンと腰をかけというものだナ。
 
 才三 なるほど、ショウギへシャンと腰をかけ、鼓をばこう持ってヤリスズにして。
 
 太夫 それは、ハリスズというものだナ。
 
 才三 なるほど、 ハリスズにして、徳和歌後万載……と……。
 
 太夫 長い。
 
 才三 長いから、両方の端を切って、真ん中の良いところ。
 
 太夫 万歳もあらあら成就つかまつり、四方に霞ととうとめて、何か珍しい話はない かナ。
 
 才三 さぁ、この頃忙しくて、旅もかげれねぇで、さっはり珍しい話コ忘れましたナ。
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